特別展「やまと絵 ‐受け継がれる王朝の美‐」
東京国立博物館|東京都
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動く屏風
白洲正子が著書「かくれ里」で絶賛した『日月四季山水図屏風』。
ずっと前から観たいと思っていたが、天野山金剛寺という大阪のお寺が所蔵しており、なかなかチャンスに恵まれなかった。いつの間にか国宝にもなっていて、例え誰が描いたか分からなくても「凄いものは凄い」と認められるんだなぁとしみじみ。(国宝指定は2018年)
実際に観てみると、山も海も松すべてが動いている感じがする。松なんかは根が盛り上がって足のように見え、ディズニー映画の「ファンタジア」で箒が歩いている姿を思い出した。こんもりとした緑の山々だって、マンガ昔話に出てきそう。ただ、このようなマンガチックな山の描き方は『日月四季山水図屏風』特有のものではなく、本展示会の他の作品にもちょいちょい見受けられた。それでも6曲1双屏風に大きく描かれると迫力が違う。左隻には白いモンブランケーキのような雪山が描かれており、うねうねした稜線に緑の松が整列しているのも異様だ。大胆な山の描き方に対し、海の波は細い筆で丁寧に描かれている。波しぶきには銀粉が振りかけられ、きっと作成当初はキラキラしていたであろう。
この屏風で分かっているのは室町時代に制作されたことぐらいで、誰が何のために描いたのか分からないが、金銀がふんだんに使われているので高貴な方との関わりで作られたのではと勝手に想像する。金剛寺は平安時代には後白河上皇とその妹の八条女院の帰依と庇護を受けていたというし、南北朝時代には後醍醐天皇と近い関係だったらしい。負けた南朝の拠点だったため一時期衰退したが、お寺で作った「天野酒」がヒットして盛り返したので、かつて培った雅な方々との繋がりから・・というのもアリではないか。白洲正子はこの辺に住む坊さんが毎日修行する中で大自然を曼荼羅に見立てて描いたのだろう言っているが修行僧にしては上手すぎると個人的には思う。(雪舟も坊さんだが)
この絵が単なる風景画ではなく、仏教的意味合いを持つとの説もある。當麻寺奥院の『十戒図屏風』(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上、声聞、縁覚、菩薩、仏の十界を表わした屏風)に構成が似ているとのこと。十戒図から仏教的なものを排除すると太陽と月、波、滝が残るという。にわかに納得はできない説だが、それでも灌頂(かんじょう)という出家するときにキリスト教の洗礼のように水を頭にかける儀式で利用されたと伝わるので、仏教と関係がないとも言い切れない。謎が多い分、また魅力的とも言える。
展示会では他にも雪舟の『四季花鳥図屏風』や『信貴山縁起絵巻』『鳥獣戯画』『百鬼夜行絵巻』などなど有名作品が多く出展しているので、まだ観てない方は残り期間が短いのでお早めに。
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