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開館1周年記念特別展 二つの頂 ―宋磁と清朝官窯

開館1周年記念特別展 二つの頂 ―宋磁と清朝官窯

静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)|東京都

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中国陶磁の歴史と魅力を、まるっとまとめて分かりやすく

静嘉堂@丸の内 開館1周年記念の『二つの頂-宋磁と清朝官窯』展。8000年を超える悠久の歴史をもち、陶芸技術の粋を極めた中国陶磁。日本のやきもののルーツのひとつでもある中国陶磁の歴史上で、《宋磁》と《清朝官窯》を「至高の宋磁、究極の清朝」と、二つの頂とスポットを当て、三菱の彌之助と小彌太が明治から昭和初期にかけて蒐集した中国陶磁コレクションの優品を、精選展示してくれているとのこと。つまり中国陶磁器の一番おいしいところが詰まった展覧会と言えるのでは??一応「やきもの」好きの私としては、これは外せない展覧会だと思いました。また「至高と究極」といわれると、どうしても某コミックが頭に浮かんでしまう世代です(笑)。
平日午後、前展「あの世の探検」同様に、とても空いていました。ゆっくり鑑賞できてとてもありがたいのですが、ちょっと心配になります。なにしろ丸の内に来て駅直結のこの場所で、さぞや混雑するだろうと思ってその通りだったのは、「響きあう名宝」だけ。「明治美術狂想曲」「サムライのおしゃれ」はそれなりに混雑してはいましたが‥。
今展、展示数はさほど多くはありませんが、それなりに内容は充実していて、各時代に栄えた名窯から産出した傑作が集結していました。キャプションも分かりやすく、教科書の様な展示でした。更にここのところずっとご出座ではありますが、国宝曜変天目にも、お会い出来ました。(今回は、天目台(尼崎台)や収納箱などの付属品とあわせて展示されていました。この箱を観たら、収められた品の貴重さが一層ヒシヒシと伝わって来ました。)
まずは美術的に優れた「宋磁」を、後の時代に影響を与えた「古典」と呼んで、その多彩な魅力を紹介していました。重文《油滴天目》も奇麗でした。私は焼き物の中で特に青磁が好きなので、中国各地の窯の陶工たちが工夫を凝らして編み出した様々な青磁が並ぶ様は、嬉しい限りでした。一言に青磁と言っても、実際には青や緑のみならず、青緑色から淡黄色に近いもの、青空のような濃い水色、赤味をおびるものもあり、実に多様です。今展ではそんな「青」の数々も堪能することができました。
次の清朝時代の作品の展示室は写真撮影可能でした。景徳鎮は、古くから「磁器の都」と呼ばれていましたが、清代初期の「三藩の乱」などで荒廃してしまい、これを立て直したのが、清朝の康煕帝だそうです。皇帝は首都・北京から遠く離れた南方の景徳鎮に「督陶官」と呼ばれる官窯の管理運営を行う官吏を派遣し、磁器の研究開発にあたらせました。この結果、特に清朝が安定期に入った康煕帝・雍正帝・乾隆帝の時代、中国の陶磁器は技術的に大発展を遂げました。更にやがて、ヨーロッパの七宝焼の技法を取り入れた「粉彩」という技法により、絵具の色数が増え、色のグラデーションや細密な描写が可能になり、西洋絵画的な陰影法、遠近法を取り入れて、精緻な絵付けができるようになったそうです。「青花・五彩・粉彩・単色釉」、「吹釉法」、「火焰紅」様々な技法の景徳鎮の名器がずらりと並ぶ様は、まさに壮観でした。釉薬や絵の具や技法と、全てがどんどん進化し、美しい器を産出し続けた中国。本当に圧倒されます。そんな展示の最後の方に「単色釉」のモノがありました。雰囲気、北欧風です。なんとなく意外な感じがしますが、これもなかなか難しいのではと良く観れば凄くキレイです。青磁や北欧食器好きな私は、これはもう当然お高価いのでしょうが、日常使ってみたくなってしまいます。
残念ながらショップには単色釉の器はありませんでした。文化村のイッタラ展の時のような衝動買いはせずに済みました(笑)。今回はミニ図録もありませんでした。「曜変天目のバスソルト」って、どんなものなのだろう?まさか虹色に輝くお塩だったりはしないでしょう。もうすぐ11/3㈮から、同じ丸の内で静嘉堂から徒歩3‐4分の出光美術館で「青磁─世界を魅了したやきもの」展が始まります。私はとても楽しみにしているのですが、出来れば今展と両方を観て、青磁の魅力を満喫して頂ければと思います。それから、「東京文化財ウィーク 2023」の特別公開事業として、東京都選定歴史的建造物である世田谷の静嘉堂文庫の内部を、解説付きで無料で見学できるそうです。要申込etsuran@seikado.or.jp先着順だそうなので、スミマセン、まだ空きがあるかは不明です。

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