
京都市美術館開館90周年記念展 竹内栖鳳 破壊と創生のエネルギー
京都市京セラ美術館|京都府
開催期間: ~
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気になる後期
先月に続いて岡崎公園の国立&市立美術館のダブル訪問だ。今回も先に京近見てから、道路渡って市美へとやってきた。
(道路はあんまり車が通らないので楽勝で横断できるが、よい子は横断歩道を渡りましょう)
やってるのは開館90周年記念の竹内栖鳳展だ。京都画壇の開祖であり近代日本画の大御所なので、客の入りも多いかなと思ってきたら意外やさほどでもなく、余裕の鑑賞空間でゆったりと回ることができた。
会期が始まって二週間たった平日だったからかなと思ったが、実はそれが理由じゃないのはあとでわかった。
当展もお約束かの如く、前後期の二本立てだ。私が行ったのは前期。
写生帖や参考作品を除いての出典数は124点。うち通期展示が43点で残りは入れ替えだ。
展示リスト見ながらこのレビュー書いてるが、訪問時は予習なしで見てないので特に気にも留めなかった。
展示替えあっても半期で80点超もあるし、作品も優品ぞろいで特に不満もなく鑑賞していたが、解説に《絵になる最初》という作品名が頻出し、どうやらこれが当展の目玉なんだとわかってきた。
で、会場出た後にじっくり展示リスト見たら、なんと当展唯一の重文作品がその《絵になる最初》で、後期展示だと判明した。
「なーにー、やっちまったなー」と、嘆き悲しめども手遅れ(涙)
作品をネットで見たら、なんともエロチックだけど気品漂う美人画ではないか。おまけに、その絵の下絵まで重文指定。こんなん初めてだ。
これをお読みの皆様、後期は11月7日からです。シルバーウイーク3連休に京都市美に来るのはグっと我慢です。
前後期両方行く? 失礼しました。
気を取り直してレビュー書きます。
京都画壇の始祖である竹内栖鳳。始祖たる所以は師事した作家名見れば明白で、栖鳳に続いた画家たちはいずれも近代日本画を背負って立つ関西の俊英ばかりだ。
栖鳳作品は、とにかくいろんな美術館にあるし、日本画展にも出てくるので、見たことないってかたは少ないと思う。、
が、ああ、あの絵を描いた人かってイメージはあんまりないのでは?
山種の重文《班猫》が有名っちゃ有名だけど、猫の知名度じゃ春草の《黒き猫》にやや及ばず感あるし。
この人にこの絵ありという一点必殺的な作品がないのが栖鳳の特徴ではなかろうか。あくまで素人の印象ですが。
でも、逆に言えばどの作品も素晴らしいものばかりだから、一点選べと言われても困るのかもしれない。
栖鳳がモチーフとしたもので最も有名なのは動物、それも猛獣や巨大哺乳類だ。
ライオン、虎、象、熊と、いったいどこで観察したのかと思ってしまうが、当館の東隣は動物園でした(笑)
京都画壇には動物画が得意な作家多いのは、みんなここで写生の鍛錬に励んだのでしょう。
でもとにかく、栖鳳のライオンはすごいね。京都の獅子王ここにあり。
当展のタイトルに「破壊と創生のエネルギー」とあるのは、ステレオタイプな江戸期の動物画を破壊しライオンや象の獰猛さ、俊敏さ、雄大さをリアルに描いて見せたことで、明治の人々の度肝を抜いたからだろう。
そこには洋画にも学んだ画風も感じ取れる。実際、渡欧して描いたローマの遺跡の絵も出ている。日本画を破壊するにはまず洋画を知るべしという謙虚さも持っていたわけだ。
鳥も超絶上手い。闘鶏を描いた《蹴合》なんか、まさに若冲のニワトリを破壊し再生した絵じゃなかろうか。
あの動きを絵にできたのはやはり写生鍛錬の賜物か。京都画壇の面々はよく写生しているが、それは師の栖鳳が範を垂れてたからだ。
美人画の前期限定なら《アレ夕立に》で決まり。扇で顔を隠す舞妓を横から描いたいい絵だ。これも重文にしてもよいぐらい。
今回の栖鳳展の特色の一つは下絵の展示が結構な数あることだ。巨匠のデッサンがどんなものかを知るにはうってつけなのだが、やや多過ぎの感も。
二つ三つに留めて、その分、完成品を増やしてほしかった。下絵を見に来たわけじゃないしね。
特に大屏風の下絵なんかは場所も取るので、スペースがもったいないと思った。
さて地元京都での竹内栖鳳展、明治から昭和まで当館所蔵品中心にいろんな美術館からも作品が来ていて、さすが京都市美だとの思いはある。
しかし、返す返すも《絵になる最初》が見たかった。この作品はつい最近重文となったみたいでまだ知名度ないから余計にそう思う。
これが後期のみなら、前期には《班猫》もってきて初めてバランスが取れるというもんだ。山種さん、渋ったのかねえ。
あるいは去年の山種での栖鳳展に京都市美が《絵になる最初》を貸さなかったからか。
もうちょいギブアンドテイクを心がけてほしいもんです。