ガウディとサグラダ・ファミリア展
東京国立近代美術館|東京都
開催期間: ~
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数式の美・ガウディに見る理系アート
休日の朝イチで訪問しました、大きな規模としては2003年以来20年ぶり開催の【ガウディとサグラダ=ファミリア展】。
人気の高まりを受け8月から入場制限を始めたとの事で、建物の外と中と入場ダブルチェックされて少々謎な物々しさ。
しかし制限のおかげか人が激混みとか、キャプションが読めない・・・といった弊害は私の行った当時はありませんでした。
スペインを連想するトップ5には世界遺産のサグラダファミリアが入るくらい、国を体現する建築の担い手となったアントニオ・ガウディ。
初めてサグラダファミリアの画集を見た時に、ジブリ映画を思わせる洞窟なのか樹海なのか、妙に有機的な曲線と大木のように捩じれた柱に一目惚れしましたが
『~サグラダファミリアの~略~教会完成は後200年くらいかかる見込み』
という一文に印象が吹き飛びました。
なんと・・・生きてる内に完成が見られない?
何十年、何百年と世代を重ね、連綿と続く巨大建造物・・・まるでエジプトピラミッド。いやあれより長いよ建設期間・・・スペインて凄い。
と、その壮大なロマンを感じる事業に感動していたのですが、数年後旅行中に添乗員さんから
「あ―、サグラダファミリアですか。たしか後10年かそこらで完成しますよ。」
と教えて頂き、え!?200年は!?と唖然。
聞けば建築当初よりもクレーンだの秒速設計シミュレーションだのと建造テクノロジーが爆速に進んだ為、建築期間が100年単位で縮んだのだとか。
建築技術革新の加速っぷりにちょっと怖くなります。あとちょっとだけロマンが目減りしました。いえ、完成してくれた方が何億倍と嬉しいですが。
今回の展示は屋内なので、サグラダファミリア自体の壮大さというか圧巻の姿は紹介できないだろうし、どういう展示なのか少々ハテナ?でした。
しかし図面・模型・写真・映像をまじえて、視覚的に解りやすく建築思想と物理的な造形原理が紹介されて理路整然な理系分野(特に数学。鬼門!)にアレルギーというかアナフィラキシー症状気味の私にも”理(ことわり)の美”の美しさに目から鱗気分。独断注目をピックします。
①逆さ吊り実験
展示作品:コローニア・グエル教会堂、逆さ吊り実験
ワイヤー固定された大き目のまな板みたいな木板に、ペンダントに使うような細いチェーンがシャンデリアのように釣り下がっていて、チェーンネックレスが連なったような不思議な展示です。
このネックレス状態の鎖がなんで教会?と不思議に思っていると、木板の真下には同じ大きさくらいの鏡が。
下を覗き込んで見てビックリ!鏡に映ったチェーンのシャンデリアはグエル教会堂の姿になっています。
自然の法則による力学が最も合理的なものだと考えたガウディは、無数のたるませた鎖に重りを下げてバランスをとった形状が最も理に適うと考えて、この「逆さ吊り実験」を考案、何年も続けて研究したそうです。
うーん、この鏡越しに見る作品・・・自然の力学を表現する手法といい、なにか既視感が・・・・
ふと思い浮かぶのは【万能の天才】レオナルド・ダ・ヴィンチ。
そういえばダ・ヴィンチも”アトランティコ手稿”とか1000ページ越えで絵画論、数学、建築、植物、解剖、土木、発明等々書き殴った手稿がありました。しかも鏡に映さないと読めない鏡文字で。
植物の詳細なスケッチとか、びっちりサイズの揃った文章の書き方に浮かぶ几帳面さとか、、なんか色々共通項を感じますね。
ダ・ヴィンチも遠近法や解剖学等、絵の具顔料の改造(コレは失敗してますが)自分の知識や探求の成果を絵画に活かしています。
芸術はどちらかというと、作者の感性や気持ちが原動力になる”情”由来のものが主流なので、数字や法則という理(ことわり)を根拠にする作品は妙に心地の良い違和感があります。鏡越しに作品鑑賞した目から鱗感覚というか。。。芸術というくくりでは同じなんですけど。
②幾何学の美
展示作品:参考出品 サグラダ・ファミリア聖堂、主身廊円柱(8星形)模型
図形や空間を究める『幾何学』は数学の分野のひとつ。ガウディはこの幾何学を建築に多用しています。
教会の円柱は直線ではなくて、生き物のように緩やかに捩じれてカーブを描き、鍾乳石のようなゴツい彫刻は自然の洞窟にいるような気持ちになりますが、自然に見えるカーブした柱は、構造計算と幾何学の数式によって構成されていて、数学という絶対的な根拠があります。
この数字の根拠がある上での有機的に見える美しさが本当に凄い。建築は絵画と違って一人では作れません。
設計を基に石の加工、設営とたくさんの人が1つの巨大な対象を作る時にズレの無い共通の認識、共通の正解を共有することはものすごく大切です。
でないと天井や屋根の自重が支えられずに崩れる結果が目に見えてますから。
形状を数で表現できる幾何学、もの凄く奥が深いです。素晴らしき理系アート。
多分理論とかもっと理解できればより解かりみが増すのでしょうが、理系力ゼロでさっぱり分からないので想像力でカバーしときます。
③動物とキラキラの破砕タイル
展示作品:サグラダファミリア聖堂、降誕の正面:【カエルの浮彫】【蚊の浮彫】
巨大な聖堂の中で10cmに満たない虫や生き物もちゃんと彫刻してます。外からは絶対判別不可能なのですけど。
ガウディの、人間以外の地上の生物全てへの愛着が感じられて個人的に刺さりました。カエルが可愛すぎる。。。
もうひとつの割れたり欠けたタイル片や故意に割ったタイル破片、ガラス片といった光るガラクタで覆う破砕タイルもガウディ建築の特徴のひとつ。タイルだけでなくてガラス片とか混ざってるので原材料としては処分品扱いのタイルが見事な装飾品に変身です。エコとかSDGSを先取りし過ぎじゃなかろうか。見た目がキラキラして本当に綺麗なんですよねこの色鮮やかなタイル破片。
多分モスクとか、イスラムのタイル美術の影響でしょうが、地球に優しく美しい手法を編み出すガウディ、ほんとに天才だなと思います。
4章構成の会場を出るとそのままグッズ売り場へ。
今回のグッズ、デザイン性が高くて優良グッズが多いです!テンション上がります!
刺繍缶バッジとかタオルとか布バッグとか、コスパ良さげですが、数買うと馬鹿にならないのでお財布と要相談ですね。
次は佐川に巡回されるようなので、関西圏の皆様も要チェックです。
【ガウディとサグラダ・ファミリア展】
会場:東京国立近代美術館(東京都千代田区北の丸公園3-1)
会期:2023年6月13日(火)〜9月10日(日)
休館日:月曜日 ※8月28日(月)、9月4日(月)は臨時開館
開館時間:10:00~17:00(金・土曜日は20:00まで)
※8月20日(日)は9:30~18:00・8月27日(日)~9月10日(日)は10:00~20:00
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