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サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品

サントリー美術館コレクション展 名品ときたま迷品

サントリー美術館|東京都

開催期間:

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「迷品」の魅力を堪能。さすがサントリー美術館さんです。面白かった。

今展は、久しぶりサントリー美術館のコレクション展で、「生活の中の美」を基本理念に収集されたそのコレクションが、「陶磁」や「染織と装身具」など、ジャンルごとに紹介されています。コレクション展ですから、今までにも何度か観て来たものも結構あったりしますが、初お目見えもまた随分とありました。国宝や名品を紹介する展覧会というのは、結構色々な美術館で開催されていますが、名品と迷品を併せた展覧会は、意外と珍しいような‥。って言うか「迷品」って何?? これまで展覧会にあまり出品されて来なかった知られざる秘蔵コレクションなのだという‥。「名品ときたま迷品」なんてなんだかよく分からないタイトルのせいで、ちょっと行くかどうか、それこそ「迷」ってしまいましたが、どうして、流石にサン美さん、なかなかに面白かったです。
まず、入り口前のタイトル板に丸窓を開け、最初の作品をわざわざチラ見せ。それはポスターやチケットにもある摩訶不思議な物体で、江戸時代に作られた蹴鞠用の鞠と、それを保管するために作られた木枠と架台だそうです。昔のバレーボールに、ちょっと似ています。ある専門家の見解によれば、日本に現存するもっとも美しい蹴鞠とのこと。蹴鞠? あのNHK大河「光る‥」でもやっていた、平安貴族たちの‥あれ、2枚の鹿革を馬革で縫い合わせて作る鞠、だそうです。たしか以前にもどこかで見たことがあったと‥。例によって中国から入って来て日本でまた少しずつ変わり、室町前期頃に整った形が、現在まで続いていて、談山神社とかあちこちで行われているとか。勝敗を争うよりも、協力して長く蹴り続ける記録に挑戦するもので、しかも優美に、と言うモノらしいです。「鞠道」と言って、飛鳥井・難波の両家がその道の師範家と定められているとのこと。江戸期にはあの吉宗の蹴鞠絵もあり、武家の嗜みの一つで、井原西鶴によれば庶民もやったとか‥。蹴鞠はもともと古代中国では雨乞い神事で、滞った天地の気を毬を蹴上げることで動かしバランスを整え、雨を降らせようという‥こちらは私の好きな分野ですが‥。脱線しました。とにかく、思っていたより大きくて、すっごくキレイ!!これ、蹴るのもったいないし、ちょっと重そうだし、あまり飛ばなそう‥。持ってみたい!!いえ蹴ってみたい!!(笑)
蹴鞠に次いで国宝《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》。残念、重文の《桐竹鳳凰蒔絵文台・硯箱》は後期の展示でした。豪華絢爛とまではいかなくても、漆工芸好きの私にはたまらない品々が色々あって、ルンルンと観ていると、ちょっと見には地味に見える《木画蒔絵菊花文透冠棚》に、まさに目を奪われました。もちろん国宝重文などの指定は何もついていません。衣冠・束帯で着ける冠を置くための棚ということですが、全面に極小の木片のパーツが寸分も狂わず組み合わされて美しい模様を描いていて、天板・底板の四隅、長側面の中央には、菊唐草を表した銀製八双金具をも打ち、刳形の脚には銀製覆輪を付け、側面には木製漆塗の菊七宝形透飾が嵌め込まれています。付随の箱書きから、これが江戸後期の大名茶人で、松江藩七代藩主松平不昧(治郷)の遺愛品であったことが分かっていて、更に箱扉の裏面には「口伝ニテ如泥作」とある覚書が貼られ、本品が不昧に仕えた細工師小林如泥の作として伝えられているとのこと。天板などに使われていたのは、木片を寄せ集めて描く木象嵌の一種「木画」という技法だそうです。見た目ちょっとだけ寄木細工にも似ている感でますが、繰り抜いて埋め込むという作業は、全くもって違い、さらに複雑で難しい感じがします。色の違う木材だけでなく、象牙や角や螺鈿なども使われるとか‥。以前正倉院宝物で観た、美しい《木画紫檀双六局》や、また《螺鈿五弦琵琶》とかも、「木画」技法とあったと思い出しました。時代は江戸期ですが、正倉院御物以上かもしれない超絶技巧の中の超絶技巧の様な作品でした。単眼鏡でず~っと見入ってしまいました。
などと、初っ端のたった二点だけで、こんなに長く色々書いてしまいました。すみません。この調子でいくととんでもないことになってしまいそうで迷惑千万なことなので、もうやめておきますね。
土曜昼時の訪館でしたが、とても空いていました。おかげ様で、ゆっくりじっくり観て回ることが出来ました。コマーシャルが利く「名品」は確かに少ないかも知れませんが、実際かなり見どころ満載、充実の内容だったと思います。図録もないですが、ごく一部のポスカはありました。
サン美さんの章タイトルは今展も、第3章 陶磁―人類最良の友と暮らせば、第4章 染織と装身具―装わずにはいられない、第5章 茶の湯の美―曇りなき眼で見定める、第6章 ガラス―不透明さをも愛する、などちょっとだけワクワクする言葉が添えられていますが、キャプションも、通常の作品説明に加え、時々「学芸員のささやき」として、作品にまつわる逸話や意外な一面についての情報も添えられていて、とても楽しいです。何時も楽しませていただいています。
会期はまだまだです。季節も良いですし、ミッドタウンにはこいのぼりも泳ぎ始めました。「名品」と「迷品」の魅力を堪能してみてはいかがでしょうか。
更についでにですが、東京ミッドタウン・デザインハブでGWまで開催(無料)の「PROGETTAZIONE (プロジェッタツィオーネ) イタリアから日本へ 明日を耕す控えめな創造力」もとても面白かったですよ。

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morinousagisanさん

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