秋季特別展「みちのく いとしい仏たち」
龍谷大学 龍谷ミュージアム|京都府
開催期間: ~
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みちのく神仏ご一行様 京から江戸へ
10月に上洛した時に行きそびれた「みちのく いとしい仏たち」、東京展に行くしかないかとあきらめてたが、何とか会期ギリギリで再び京都へ行く機会ができて、真っ先に龍谷ミュージアムへと向かった。
JR京都駅から徒歩15分くらいで到着。平日の11時半ごろだったが、意外と客が多かった。特にご年配の女性陣。
信心深いかたがたなのかとも思ったが、ミュージアム向かいの西本願寺では秋の菊花展をやってたのでたぶんそれとの抱き合わせなんだろう。
展覧会場はいつものように3階から2階へと降りていくスタイル。会場でははるばる青森、秋田、岩手からやってきた仏様たちがお出迎えしてくださる。
ほとんどは江戸期のもので、木を削って作られた素朴なものばかりだ。どの仏様も地元を離れたのは初めてだろう。
皆さん、ガラスケースの中で窮屈かつ退屈なのではあるまいか。京の都の観光にでも連れて行ってあげたくなる。
仏様というくくりでいっしょくたにしているが神様もいらっしゃるし、聖徳太子から地獄の十王さんまでも。どなたも地元では神様仏様と崇められてるのだろう。
当館のシアタールームで、みちのく取材映像が上映されるとのアナウンスがあったので、見てみた。
そこでは、林業や漁業に携わるかたがたが、入山する前、出漁する前には必ず手を合わせる光景があった。
山や海での安全を祈る姿は宗教とか信仰とかといったものとはまた違った、日々の営み、慣習としての敬虔なシーンだった。
伐採や漁を終え無事に帰ってくれば、またお堂へ行き感謝の祈りを捧げる。その繰り返しが今日まで延々と続いている。
奪衣婆木像のお腹の部分を削って腹痛の薬として飲んでいたという話を聞くと、まさに地元民と共にある神様仏様たちだと思う。
(その奪衣婆像は来てませんが写真があります)
「神仏を尊び、神仏を頼らず」とは宮本武蔵の言葉だが、みちのく仏を拝むかたがたはひたすらに神様仏様だけが頼りですと祈り続ける。
そりゃそうだろう。古来彼の地には未曽有の災厄が幾度となく襲ってきた歴史がある。神も仏もないのかと我々さえも思った震災もまだ記憶に新しい。
たとえ神仏の助けなく地震や津波に被災し、夏は水害に冷害、冬は雪害に苦しめられたとしても祈りが絶えることはない。
神様仏様は祈らない者を守ってはくれぬとの思いがある限り。
岩手から始まった当展の次なる巡回先はいよいよ江戸だ。仏様がた、お疲れでしょうが、あとひと踏ん張りです。
今年の年越しは東京駅ですね。暮れには東北へ帰省する者、正月明けには再び戻って来た者たちもご尊顔を拝みに来ることもありましょう。
あるいは、日本一の大都市に住まう者たちが大勢見物にやって来ます。どうかお慈悲の眼差しで見つめてやってください。よろしくお願いします。