特別展 生誕270年 長沢芦雪
大阪中之島美術館|大阪府
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Art is long , life is short.
終了間近の人で賑わう「長沢芦雪展」後期を訪れた。
芦雪の人物像については皮肉屋、傲慢、破天荒など悪評がつきまとう。個人的には品行方正、真面目というキャラクターより断然興味を掻き立てられるが、本展の作品達を通じて浮び上がる芦雪像はそれらとは異なる。
天賦の才能を持ちながら枠にとらわれることなく、常に新しい何かを追求し、挑戦し続けた姿がそこにはあった。
天を仰ぎ、空を自由に翔ける龍からはエネルギーが満ちあふれている「龍図襖」(昇龍図)。
本展のチラシにも使われていた「牛図」は正面を向いた黒い牛が窮屈な位、画面いっぱいに描かれている。現代の漫画にも通じる奇抜な発想だが、これを観た200年以上前の人達は度肝を抜かれたのではなかろうか。
「富士越鶴図」は極端にデフォルメされ、鋭角に描かれた富士の頂きを背景に何羽もの鶴が一直線に列を成し飛んでいくという画である。さながら現代のドローンがとらえた一場面のようで今まで観たどの富嶽図とも違っていて驚嘆した。
また一方では、日常にある見落としがちな小さきものへの繊細なまなざしが何とも優しく、まぶしい。
彼の描く仔犬は有名だが「仔犬襖図」の丸みを帯びた体で無邪気にじゃれ合う仔犬達の姿は何と愛らしいことか。
「群猿図」は何匹もの猿が描かれ、思い思いの行動をしている。家族らしいもの、仲間でつるむもの、単独のもの。それぞれ表情も違う。やはり人間世界を映し出しているのか。
他にも雀、蛙、亀、兎、蟻など身の周りの命あるものをつぶさに観察し、活き活きとユーモラスに描き上げた作品に心躍らせた。
師匠である円山応挙、伊藤若冲、曾我蕭白という天才絵師ビッグ3の作品はさすがに観るものを圧倒させる傑作揃いだった。
このように森羅万象あらゆるものを多岐にわたり描き、何点もの作品を残した芦雪だが46歳で突然人々の前から姿を消したと伝えられている。いろいろな説が飛び交うが今さら詮索はすまい。ただ本展を鑑賞し終え、改めて思うのは、この世に存在する命は全て有限であるが、芸術、文学、音楽等、普遍的な価値あるものは時代を超え、人々の心を動かせ、いつまでも生き続けるのは自明の理だということである。
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- BY springwell21