版画×写真 ― 1839-1900
町田市立国際版画美術館|東京都
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人間性の追求=版画の目指すもの
町田駅から国際版画美術館への道のりが不安だったため、送迎バスを利用して会場に向かいました。乗車時間は短時間でしたが、幾度か曲がり、急な坂道もあったので、やはりこの方法が良かったと思いました。
今回の展示品を鑑賞しているうちに、さまざまな美術展で今まで19世紀前半の絵画だとばかり思って見ていたものが、実はダゲレオタイプ写真をもとに描かれたものや、版画だったのかもしれないと初めて気づきました。そういう視点での鑑賞をする機会がありませんでした。
1839年にダゲレオタイプ写真術が発明されてから、初期の段階の写真には撮影に時間がかかることや版画と違って複製できないこと、出来上がったものが不鮮明さ(あくまでも現代の見方で、当時は不鮮明という認識はないでしょうが)に加えて品質が脆弱であることなど、さまざまな弱点がありました。そのため版画と決定的に対峙するものではなく、むしろ版画を補助する機能を持つものとする視点もあったことがわかりました。版画と写真が「イメージを写す」という点で共通性があったために、一時は歩み寄り、そして離れていった過程がよく理解できました。
現代では、版画は正確性や即時性に欠けるために報道からは離れて美術として存在し、写真は正確迅速を特徴としながら人間の内面の一瞬を切り取る芸術として存在することを志向しています。
版画と写真の歴史的なかかわりの変遷を念頭に、常設展の内海柳子の作品を鑑賞しました。今回私の心に残ったのは「浮遊者」です。鳥も魚も植物も緩やかな流れに身を任せ、人間もまた自然の一部と暖かな気持ちにさせてくれました。
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