
世田谷美術館コレクション選 わたしたちは生きている! セタビの森の動物たち
世田谷美術館|東京都
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ビックリハウサー御礼参り
セタビのアクセスの不便さは、23区内の公立美術館ではTOPクラスだ。
最寄りの駅から遠いので、歩くにはしんどいし、バスもどれにどう乗るかも田舎もんには不案内だし、これまで行きたくても行けずにいた。
で、意を決して初訪問することにした。
私の重い腰を上げさせたのは、萩原朔美と榎本了壱のコレクション展だ。
何を隠そう私はビックリハウサーだったから、数十年ぶりにお二人の名前見てこれは行かねばと思った次第。
羽田空港に着いたその足で向かった。
京急、地下鉄、バスと乗り継いで、なんとか砧公園までやってきたが、公園内で迷って美術館見つけるのにまで苦労してしまった。
生みの苦しみを味わったので、次回からはバッチリだ(たぶん)
まずはメインの企画展「セタビの動物たち」から鑑賞開始。
普通はそっち目当てだよね。ついでにこれを見に来たなんてのは私ぐらいか。
でも、この企画展、ものすごくよかった。当館コレクションから、テーマを動物に絞って絵や彫刻を集めただけなんだけど、作者も動物も実にバラエティに富んでて、どれもが秀逸な作品ばかり。
洋画もあれば日本画もある。哺乳類も鳥類も爬虫類も作者の生き物愛ずる目が、鑑賞者にも乗り移ったかのような気分になる。
印象的だった作者を三人あげさせてもらう。
一人目は西野新川。私の居住地出身の日本画家。うちの町内の公民館にも絵が掛かってる。大東京の立派な美術館でまさか出会えるとは。
二人目は矢吹申彦。好きなイラストレーターだったが、昨年逝去。当展には4枚のネコの絵が出てた。
三人目が花沢徳衛。え?あの俳優さん? って思われましたか。私もそうだったので係員さんに聞いてみました。ピンポン♫ 大正解でした。あの花沢徳衛さんは画家でもあったのでした。
セタビの動物さんたち、足早に見て回ろうとしてた私を、そんなに急ぐなよと、がっちりトラップしてくれました。いやほんと、いい展覧会です。今からでも行ってみてください。
さて、動物園から、お目当てのコレクション展へ。
会場は2階、階段を上がり始めたらすぐ横の壁に、歴代ビックリハウスの表紙が並ぶ。
嬉しいねえ。階段途中で足を止めてしばらく見入ってしまった。
うちの実家の物置の奥には70年代後半のBHが数十冊眠ってるはずだ。安否確認しとかないと(笑)
萩原さんと榎本さん、お二人ともマルチな肩書有するベテランクリエイターだ。
今回のコレクション展には、その中でもアーティストとしての業績を取り上げて作品群が展示されていた。
萩原さんのは、いかにも現代的な写真、映像、ブックアート等。ポラロイドで撮りまくった「定点観測」の膨大な写真が、ひときわ目を引いた。
そして榎本さんの絵と書。書と言っても習字じゃなくて、澁澤龍彦の小説『高丘親王航海記』を全文筆写したもので、これがすごい。しかも挿絵つき。この絵もまた見事なファンタジー絵画で、あのエノモトさん(失礼!)がこんな腕前だったとは恐れ入りました。
ご両人とも、BH時代のワークしか存じ上げていなかった不見識をどうかお許しあれ。
だけど、この榎本作品は一見の価値あり。動物園帰りに是非二階へ!
セタビ初訪問しての感想は、この美術館只ものじゃないってことだ。
学芸員さんをはじめとするスタッフさんの、やる気、元気、本気がハンパなく感じとれた。
一例をあげれば、展示作品リスト。
昨年ここであった企画展「祈り・藤原新也」を私は北九州で見たのだが、ちゃんとした展示リストがなくて、次に巡回した当館HP見たらなんと、全作写真入りの完璧リストがあるではないか!
今回の動物展でも会場でもらえるのは、紙質も上等な立派なパンフレットだ。記載内容も単なる作品名、作者名だけじゃなく、何の動物かが全てわかるようになってる。
そしてさらに驚いたのが、ウエブサイトでのPDFリストでは、これまた全作写真入りではないか!
これって誠にありがたいし、他館のお手本にもなる。A4の粗悪紙1枚の両面コピーでリスト作ってらっしゃる美術館さん、セタビのリストを一度見てみてください。客はこういうとこを見てるんです。
ともあれ、セタビっていい美術館です。アクセスに難あるけど慣れればなんとかなります。