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開館15周年 生誕120年 猪熊弦一郎展

開館15周年 生誕120年 猪熊弦一郎展

横須賀美術館|神奈川県

開催期間:

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海を見ていた午後

秋晴れの9月の月曜日、横須賀美術館の屋上から浦賀水道を眺めるのは本当に気持ちよかった。
行き交う貨物船はソーダ水越しじゃありませんがw
今回の横須賀行は京急で浦賀へ、バスに乗換え観音崎まで行ってそこから徒歩で。
浦賀では東西両方の叶神社にお参りし、その際に渡船なるものに数十年ぶりに乗った。
ペリーから百恵ちゃん、日米両海軍まで、横須賀って本当にいろんな表情があって面白い。

4年ぶり3回目の横須賀美術館、月曜にやってる美術館から厳選してやって来た。
猪熊弦一郎展を開催中で、これは見ておこうと、東京から地元へ帰る日のメインエベントとした。
広大な芝生の前庭からゆるやかな上り勾配の舗道を進めば美術館だ。
人が並んでるが、それはレストラン客。美術館入口はそのちょい右側だ。
入館し観覧料払って、リュックをロッカーに入れて、トイレ済ませて、鑑賞開始。

猪熊の生誕120年、当館開館15周年記念展とあって、なかなか充実した回顧展だった。
初期作品はいかにも東京美術学校洋画科的な油絵が並ぶ。
師は藤島、同期には小磯がいたりする猪熊の才能をうかがえる人物画は、色は暗いが迫力はある。
藝大卒業後、お約束の渡仏も果たしており、そこでの作品見れば、マティスへの傾倒が見てとれる。
キャプション読めば、まさにご本人に批評を乞うたとある。そしてダメ出し食らったことも。
ダメ出しと言っても「うますぎる」と言われただけで、落ち込まなくてもよかろうにと素人は思うのだが、WWⅡ始まって帰国前最後の作品《マドモアゼルM》は、まるで青ピカソ。
ここにも一人、悩める画風変遷画家がいた。

帰国し従軍画家体験もし、終戦。
戦後の主要ワークとして壁画がある。慶大学生ホールと上野駅中央コンコースのそれが有名。
前者が《デモクラシー》、後者が《自由》というタイトルで、当展では原画が見られる。
いずれもタイトル通り、戦後の解放感がそのまま表現されたハートウォーミングな作品だ。
その数年前にコレヒドール島の戦場を描いた《壮絶なる風景》と対比されたし。

1950年に、猪熊の代表作?がついに登場する。
三越の包装紙だ。
あのジェリービーンズか空豆か、ぐにゃりとした赤い楕円形。
作者が猪熊というのは承知していたのだが、そのモデルを当展で初めて知った。
なんとそれは、銚子の海岸で見つけた石。
その石も展示されててビックリ。漬物石にもなろうかというLサイズだったから。
キャプションに「砂岩」とあるのもシャレてていいw
丸亀市の猪熊美術館の所有なんだそうだが、これは日本橋三越の玄関に飾るべきだと私は思うんですけど。

その後猪熊は渡米し、拠点をニューヨークに置くことになる。
そして具象から抽象へと画風を確立する。曰く「具象という足枷からの解放」とのこと。
そうか、足枷だったのか。マティスや戦争画からの解脱がようやく訪れたわけだ。
三越包装紙のタイトルも《華開く》だし。

米国ではいろんなモダンアート作家たちと交流あったそうで、想像するに猪熊は本当に楽しかったに違いない。
それは作品でわかる。。明るくカラフルな色調による抽象画はPOPで弾んでいる。
見てて飽きないし、これなら複製でも買って部屋に飾りたいなと思うものばかりだ。

会場の最後には、書籍の装丁、着物といったワークもある。
小説新潮の表紙も長年描いてて、10点ぐらいの水彩原画が出てた。
横須賀美には谷内六郎館があって、週刊新潮表紙絵コレクションが見れるのだが、その日は閉まってたので、小説新潮でリカバリーできましたw

会場を出て屋上へと上がる。で、冒頭の浦賀水道の眺めとなります。
ユーミンが山手のドルフィンから見ていた三浦岬。
その三浦岬に来て見えるのは房総半島。最高の秋の1日でした。

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