兵庫県立美術館開館20周年 関西の80年代
兵庫県立美術館|兵庫県
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へたうま全盛期の残滓たち
兵庫県立美術館で「関西の80年代」と題して、現代アートの展覧会があると聞いて興味本位で行ってみた。
およそ3年ぶりの訪問は7月最初の日曜日。史上最悪の猛暑が日本中を襲ってた数日間の1日だった。
阪神岩屋駅から徒歩で向かう途中、まずは栄食堂で腹ごしらえだ。腹いっぱいになったとこでいざ出陣。国道を渡れば美術館が見えてくる。
にしても暑い。暑すぎる。
美術館のてっぺんに君臨するミカエル君も心なしかグッタリしてるように見える。
がしかし、館のエントランス通路に来ると涼しい風が吹き抜けてきた。安藤忠雄のコンクリ建築は好きじゃないのだが、今回ほどありがたく感じたことはなかった。
壁に触れればヒンヤリ。全身を密着させて冷気を吸収したくなる。
入館。
冷房とコンクリの相乗効果で実に涼しい。極楽だ。
企画展と常設展両方見れるチケット買って、まずは3階企画展へ。
関西のモダンアートを集めた展覧会は、かつては当館で定期的に開催されてて、名物にもなってたそう。その全盛期が80年代なのかどうかは知らないが、いろんなやりたい放題アートが大集合だ。
出展作家は、私と同世代が多い。1950年代から1960年代前半の生まれ。昭和で言うと30年代だ。彼らが美大を卒業した直後ぐらいに制作した作品が多い。その時期が、すなわち1980年代に該当する。
1980年代というと、前半はまだまだ不景気、中盤からはバブルに向けて加速が始まった時代、バブル絶頂期が昭和と平成を股にかけた数年間てとこだろうか。
そんな時代の只中にプロのアーティストとして参入した若者たちの精気や熱気といったものが、時に激しくビンビンと、時に静かにひしひしと伝わってきた。
上手いとか下手とか関係なし。俺のアタシの渾身のストレートを受けてみろと、見る者に迫りくる作品群だ。
なんたって、80年代というと「ヘタウマ」なるワードが一世を風靡してたんだから。
少々の出来不出来は、それを免罪符にして切り捨て御免だ。
で、種々雑多、玉石混交、とにかく当時の最先端(かどうかは知らないが)のゲージツ作品が関西地方で生まれ出てきたわけだ。
まあ、関西と言ってもいささか広うござんすってなもんで、ここにはない作者や作品の中にもまだまだ名作はあるのだろう。
今回ざっと、作者の経歴を眺めるに、出身校は京都市立芸大と大阪芸大が多かった。大学出て、晴れて創作一筋に励んでた頃の作品を各作者は今見てどう思うのだろう。ここに出してきたからには青春の1ページを飾る自信作か、はたまた若気の至りの赤面作品か。
印象に残ってる作品を挙げよと言われると、あんまりない。私にとっての現代アートって、だいたいそんなもんだ。
関西モダンアートの兵どもの夢のあとと言うべきか、一過性ヘタウマ時代の残滓か。目に入って、網膜と記憶に焼き付けられることなく、そのまま後頭部からスルーしていく。作者名も作品名も。
そんな中で、欄間から思いついたという中西學の巨大作品は好きだね。ド迫力でロックバンドを透かし彫り的に表現してるのが、カッコイイ。
面白かったというか、おちょくられたのはKOSUGI+ANDOの屏風迷路。
耳なし芳一をモチーフにしたインスタレーションで、般若心経が書かれた蛇腹状の衝立に沿って誘導され、進んだ先に何が待つのかと期待するも・・・・・。
関西ということで、一発ツッコミます。
「オチはないんかい!」
とにもかくにも、関西の80年代アートとは何だったのか、当時の新進気鋭のアーティストは誰だったのかを、コンパクトに知るには兵庫県立美術館にやってもらうのが一番だ。私みたいな目が曇り脳が石化したジジイより、十代、二十代の若人が見る展覧会だ。
当展の後、2階と1階でコレクション展示を見た。2階では旅をテーマに小磯良平と金山平三をたっぷりと堪能した。神戸が産んだ2TOP。ジジイはやっぱりこっちだね。
一方、1階でやってた元永定正の小企画展。「具体」の一員なので、再び最初の前衛アートの世界に引きずり戻される。
関西美術史を振り返るとき、避けて通れぬ具体の世界。21世紀美術の礎とみるか、前世紀の遺物とみるか。この秋のGUTAI大回顧展の皆さんのレビューが楽しみだ。
帰路、ふとミカエル君を見上げれば、なんと!しぼんでヘナヘナになってるではないか。
あれって空気でふくらませてたオブジェだったんだね。
暑さでやられたっていうパフォーマンスなら拍手喝采だ。
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