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孤高の高野光正コレクションが語る ただいま やさしき明治

孤高の高野光正コレクションが語る ただいま やさしき明治

府中市美術館|東京都

開催期間:

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明治は近くなりにけり

京王線東府中駅はもっぱら乗り換え専門で、下車はしても改札外へ出たことはなかった。理由はわかる人にはわかる(笑)
今回初めて駅の外へ出た。目的は府中市美術館の企画展「ただいま やさしき明治」だ。

駅の北口からコミュニティバスに乗って15分で到着。初訪問だが立派な建物だ。会場は二階。土曜の午前でお客さん少なく、皆さん静かに鑑賞。いい雰囲気だ。
最初の展示がいきなり笠木治郎吉《新聞配達人》。当展のシンボル的作品で、安来節のドジョウ掬い顔のオッサンが新聞抱えてダッシュする絵は、ポスター、チラシ、HP等でおなじみだろう。
企画展の顔である作品をいの一番に持ってくるやり方、大好きだ。

その笠木作品がしばらく続く。やや頭デッカチに描かれた普通の人々が妙にリアル。
農家や漁村の女性は着物に日本髪なので、江戸時代かと言うとそうでもなく、戦前の昭和かと言うと男性はチョンマゲなのでそれも違う。やはりこれは明治時代なんだと理解できてくる。
リアルと書いたが、そう思わせるのはこれらの絵がすべて水彩画だからだろう。部屋にこもって描く油絵や日本画じゃなく、フィールドワークの場で生まれた絵。そこに作者が携えるのは、紙と鉛筆、水彩絵具、絵筆だ。モデルは眼前にたくさんいる。リアルに描けないわけがない。

21世紀の今も「絵を描く」ってことの原点は水彩画の写生ではなかろうか。
油絵描いたり、岩絵具使ったりすることは、義務教育ではやらないが、水彩画は全国民が必ず経験する。その事始めが明治時代だったわけだ。

当展で注目すべきは、外国人の作品だ。明治期に来日した専業や兼業の画家たちが、実に上手に日本各地をスケッチしている。
公務の取材地だったか、プライベートでの旅行先だったかはわからない。場所も、東京、横浜、日光、箱根、鎌倉、京都と、ごくオーソドックスな観光地が多い。
それでも、やはり美しい風景は外人にも日本人にも共通だ。江戸期の浮世絵師たちが描いた富士山の実物はかくも雄大で美しいのかと、西欧人の目にも新鮮に写ったに違いない。
外国人画家たちの名前は知らないのばかり。おそらく当展に来たかたほとんどそうだろう。彼らが日本で描いた作品は、日本国内には残ってなかったそう。
それを丹念に収集し、描かれた故郷へ連れ戻した高野光正氏。どのようなかたかは存じ上げぬが、その情熱と労苦に敬意を表します。

日本人画家も笠木を始め初めて聞く名前は多い。そしてその作品は水彩画。
外国人が持ち込んだ「水絵」と「油絵」で前者を選択した画家たちの作品には、油絵にはない親近感を感じてしまう。木版画で脚光浴びた吉田博も初期作品は水彩画だったんだね。

最近はモノクロ写真を解析してカラー写真にする技術があるそう。明治期の写真もカラー化されれば、当時の日本の姿がより鮮明に浮かび上がるに違いない。
しかし、そのような科学技術を駆使せずとも、ここには実際に人の眼に映った天然色の明治がある。
明治を至近距離で体感できる美術展、多くの人に見てもらいたい。

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