東海道の美 駿河への旅
静岡市美術館|静岡県
開催期間: ~
- VIEW599
- THANKS2
植松さん
歩く、歩く、武士も町人も坊さんも。
歩く、歩く、大名行列も朝鮮通信使も。
東海道図の屏風が幾つも展示されていたが、きっと屏風の前で一杯やりながら旅の話をしたのだろう。美しい景色、旅先で知った習慣の違い、失敗談、思いがけない出会いなどなど。
一緒に旅した仲間なら、思い出話に花を咲かせ、行けなかった人たちも絵を見ながら自分も行ったような気持ちになれたのではと想像する。
北斎や広重の東海道五十三次も素晴らしいが、お目当ては円山応挙や曽我蕭白。
静岡にいるとなかなか観られないBigNameだ。
蕭白の山水図、グロさは無いがやっぱり上手いな~、あっ狩野山雪の猿もいると思いながら、ふと東海道に関係ない絵なのに何であるのだろうと疑問を持ちキャプションを読むと、今は東京国立博物館所蔵だが、元は旧東海道原宿(現在の静岡県沼津市)の植松家の伝来品との説明。
・・・植松さんって誰??
応挙に自分の家の襖絵を描かせ、鶴の掛け軸の賛には“植松君へ送る”とある。
これはただ者ではない。
静岡県民の私でも知らなかったが、植松家とは江戸初期から米や塩を商いにしていた地元の郷士で、 6 代当主・植松季英(1729-1809)は親交があった白隠禅師の伝手から池大雅、応挙と知り合い、遂には息子の嗣子を応挙の弟子にしてしまったとのこと。
東海道沿道という利便性から植松家は旅する文化人たちのサロンになり、さらに園芸、植物に関心が高かった季英が整備した庭園「帯笑園(たいしょうえん)」は各所から集められた様々な花や草木を鑑賞できたことから、後のシーボルトに「今迄日本にて見たるもののなかにて最も美しく、また鑑賞植物に最も豊かなるものなり」絶賛された。
美術鑑賞がきっかけで静岡に思いがけない名士がいたことが分かり、たまには郷土について調べてみるもの良いなと感じた一日だった。
- THANKS!をクリックしたユーザー
- Audreyさん、Sukekiyo-Acckermanさん