描き鉄だﾖ！　全員集合

「鉄」になる要件の一つであり、最大のものは、幼少期にいろんな電車を見ることができたかどうかである。
わかりやすく言えば、旧国鉄、今のJRや、私鉄各社の様々な電車が走る路線が地元にあるか、だ。
そうじゃない地域、すなわちJRしか通ってなく、同じ色や形の面白くもない列車しか走ってないとこで育った子供は鉄になんかなりようがない。
私がそうだ。
のりもの絵本で、小田急ロマンスカーや近鉄ビスタカーを見ても、「へえー」より「ふーん」であって、そんな電車が現実にあるかどうかも半信半疑だったわけだ。
そりゃ、SLは走ってましたよ。だけど見ても乘ってもノロくて煙たいだけでかっこいいとは思わなかった。

ですから、今年が鉄道150年でいろんなイベントや企画展があると聞いても全然ときめかないわけだ。

しかし、タイガー立石のド派手な鉄道♡な絵が目に入ってしまったら、もうイチコロでした。
こりゃ絶対行くぞと、心の汽笛一声、出発進行なのでありました。
幸いにも、11月に北へ向かう予定あり。
羽田から京急エアポート快特成田空港行きに乗り、品川でJRに乗換え、上野東京ライン上野行き普通電車で東京駅到着。
東北新幹線仙台行きやまびこ号への乗り継ぎの時間をたっぷり取って、ステーションギャラリーへやって来た。

いきなり感想から書くと、いい！　
何がって、会場も、絵も、写真も、画家も、写真家も、企画した学芸員さんも、そして鉄道会社各社さんも、全部いい！
ここに一人の、ニワカ鉄が誕生だ！
私ら田舎もんは、レール上を走る乗り物は、総じて「汽車」と言う。
当展の汽車の絵、どれをとってもカッコいい！
昔の汽車も、今の汽車も、全部が全部、作者の想いを乗せて走ってる！
夢も浪漫も、出会いも別れも、踏切もトンネルも、駅弁も冷凍ミカンも、汽車には全部ある！
クルマやヒコーキにはない！
いいなあ、汽車って！
ビックリマークをこれほど多用するレビューが書けて本望だ。

しかし、この展覧会のキュレーターさん、すげえわ。
ご自身が鉄かどうかはわからないが、よくぞこれだけの鉄道絵画を集めてくださった。
もうそれだけで、日本中の鉄から神格化されるに違いない。

鉄もそうでない人も、見に来た各人各様の鉄道への想いとマッチする絵が、絶対にある。
それを見つけることがこの展覧会の楽しみ方だ。
私が見つけたのを列挙して、はなはだ簡単ではございますが鉄道150年へのお祝いとお礼の言葉に代えさせていただきます。

五姓田義松 《駿河湾風景》　　富士山と汽車と海。絶景。
鈴木亜夫 《ターンテーブル》　　たった4人で汽車を回す。今ならパワハラ。
榎倉省吾 《転轍機》　　これも人力メカ。まだあるのかな？
中村岳陵 《驀進》　　SL運転席に乗り込んだ執念。
梶原緋佐子 《帰郷》　　京都市美の美人画まで。
山下清 《弥生軒の弁当掛け紙》　　ぼ、ぼくは駅弁が好きなんだな。
佐藤哲三 《赤帽平山氏》　　絶滅職種その１。
岩佐保雄 《踏切を守る母子》　　絶滅職種その２。
山鹿清華 《驀進》　　満鉄あじあ号の雄姿がタペストリーに。
伊藤善 《東京駅（爆撃後）》　　ステーションギャラリーの煉瓦壁が3階にない理由。
中村宏 《国鉄品川》　　健さんに見えてしょうがない。
不染哲 《山海図絵》　　大正12年にドローンが。
立石大河亞 《香春岳対サント・ビクトワール山》　　タイガーvsセザンヌ。行司は富士山。
元田久治 《Indication-Tokyo Station-》　ウクライナに東京駅ありせば
柳幸典 《トーキョー・ダイアグラムH'6》　　クイズノックが作った問題？
香月泰男 《煙》　To Russia with anger.