鑑賞レポート一覧

ゲルハルト・リヒター展

ゲルハルト・リヒター展

東京国立近代美術館|東京都

開催期間:

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答えはきっと奥のほう 心のずっと奥のほう

ゲルハルト・リヒター?
誰それ?
という私みたいな客も押しかけてるようで、平日というのに結構客が入ってました。
そもそも主催が朝日新聞ですから、インテリ層向けな展覧会には違いありません。
読売はまずやりませんね、この手の意識高い系現代アート展は。
それでも、客はやってきます。冥途の土産にと。

私は意識高い皆様のお邪魔にならぬよう、ちゃんと予習してやってまいりました。
と言っても、当サイト始めネットを流し読みするだけですが。
ふむふむなるほど、現在世界最高峰のアーティストなんだ。
そしてその作品は・・・・
うーん、難しそう。解説や評論が輪をかけて難しくしてるではないか。

美術評論の世界って、ある意味相対性理論より難しいのでは?
てゆーか、難しく書きたがるんだよね、皆さん。
わたしゃ一度アーティストさんに聞いてみたい。
「ほんとにこの評論に書いてあるみたいなことを意識して制作したのか?」と。
答えは意外とアホみたいに簡単で、「いいえ全然。私もこれ読んで何のことかわかりませんでした。」
なんてね。

まいっか。
とにかく、現場、現物、現実の3現主義で行くしかないと、会場に入りました。
以下、順不同で感想を。

アブストラクト・ペインティング。
まんまです。
アブストラクトだから、何かわかっちゃいけません。
そこに潜む深遠な何かを各自が読み取るしかないのです。
出展数は多いです。そしてほとんどがこの20年以内、すなわち作者が70過ぎてからの作品です。
まるで20代のようなアグレッシブさ全開です。

8枚のガラス。
巨大な板ガラスが微妙に傾きを変えて、並んで立っています。
客や室内や作品が面白く映りこむのかというと、そんなことありません。
この作品、実は私、過去にここであった「窓展」で見てるはずなんですが、全然覚えてませんでした。
今回は世界最高峰というバイアスかかってますから、もう忘れません。

フォト・ペインティング。
写真? 絵画? どっちなんだ?
どっちにしても、目に入るのは「ピンボケの写真」か「ボカした絵画」のどちらかです。
どっちもだということか。
了解です。一粒で二度おいしいってこのことですね。

グレイ・ペインティング。
見てのとおりの灰色です。灰色の奥に潜む深遠な何かを各自が読み取るわけです。
作者によれば、灰色は「無」なんだそうですが・・・。
北野武さんのオヤジさんはペンキ屋さんで、客から何色がいいかと相談されたら「絶対に灰色がいいよ。」とゴリ押ししてたそう。
余ったペンキを全部混ぜて灰色にして在庫処分してやろうという、実に合理的かつ巧妙な戦略です。決して「無」ではありません。
リヒターさんも、「無」だと言いながら絵の具の有効活用という「有」を生み出したことになるのかな?

カラーチャート。
モノトーンやダークな作品が多い展覧会にあって、ド派手な色彩感にあふれてます。
《4900の色彩》という作品名ですが、4900色あるんじゃなくて、25色の正方形パネルが各色196枚という意味です。
見た目は、かつてのブラウン管TV画面の拡大か、はたまたカラー印刷の拡大か。
離れて見ましょう。TVに近づきすぎると目が悪くなりますから。

ストリップ。
これこそ、ブラウン管TVの走査線かな。
カラーTVが調子悪いとこうなります。
手でぶっ叩くと、なおります。
作品をぶっ叩いちゃだめですよ。
ちなみに、この作品はデジタルプリントだそうですが、キャプションの制作方法読むと地道なアナログ的手法の極致ですね。

オイル・オン・フォト。
写真に絵の具こぼした失敗作?
いえいえ、意図的にやった立派な作品です。
元の写真に何が写ってたのかを各自が読み取らなければなりません。
だけどこれ、心霊写真に見えてくるのも結構あります。
そういうのが苦手なかたは、あんまり集中して見ないほうがいいと思います。
夢に出てきますから。

ドローイング。
線画。これは私にも書けそうです。
などと大それたことを思ってはいけません。
世界最高峰の画家が引いた線は、我々の想像をはるかに超えた深遠な何かを示唆しているのです。
出展数はかなり多く、ほとんどが昨年の今頃に描かれたものです。
老大家の筆力いまだ衰えずってとこでしょうか。

8人の女性見習看護師。
お、ローリングストーンズのアルバム「Some Girls」のジャケットじゃん。
と、思いきや、米国で起きた殺人事件の被害者写真だそう。
元々はフォトペインティング作品で、当展にはその写真撮影バージョンが出ています。
写真→絵→写真というサイクルを経た作品ですが、何故そうする必要があったのかは超難問です。

アラジン。
これも色が前面に出たシリーズです。
2010年から始めた作品だそうですが、手法は私らも昔やったような気がします。
画材に、ラッカー、ガラス、アルディボンドとあります。
「アルディボンドとは何ぞや?」と、会場の館員さんに聞いてみましたが答えは返ってきませんでした。
あとでググったらわかりました。
ちなみに、カラーチャートの正方形パネルもアルディボンド製です。

頭蓋骨、花、風景、肖像画。
ああやっぱりか。これがリヒター氏の実力だ。
上手いなあ。リヒター版「青の時代」。
これを知ってるから、みんな安心して抽象作品を絶賛するんだね。

ビルケナウ。
細かい解説はいろんなかたがされてますので、そっちを読んでください。
私たちは作品名の意味を知ること、そしてリヒター氏がドイツ人であることさえ知ればよいのです。
それだけで、この作品が氏の最重要作品かつ集大成だとわかります。
この絵のモチーフは20世紀最大のジェノサイドです。
それをやった組織の一員に、リヒター氏の叔父さんがいました。
そのフォトペインティング(を撮った写真)も当展に出ています。
何故でしょう。難問です。

前述したように、リヒター氏は絵画作品を写真に撮って、それを新作だとして発表しています。
ビルケナウもそうで、絵とその写真、さらにはそれらが映る大鏡が同じ部屋に展示されています。
見え方の違いを各自が考察せよとの課題が突きつけられているのです。

当展は全作品を通じて、作者からビジターへ発せられる公開質問の場と言っていいのではないでしょうか。
「どうだい? 私に見えたものが君にも見えたかい?」と。

答えは作者の心の奥の奥。
ビルケナウを描いて作者が得た答えもそこにあるのでしょう。
そしてそこには花瓶があり、真っ赤な薔薇が一輪生けてあるのです。
画業の集大成を描き終えた後に、作者の心の奥に咲いた薔薇を共有することこそ、この難解な作品群からの問いかけへの答えなのかもしれません。

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