特別展 ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展
大阪市立美術館|大阪府
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オランダ絵画の現実感
修復が済み、画中画が顕になって印象をがらりと変えたフェルメールの《窓辺で手紙を読む女》一点でひっぱりすぎでは?と思わず言ってしまいたくなるくらい、本展は普通の「17世紀オランダ絵画展」だった。会場の広さに比して作品数は抑えめ。美術館をぐるりと周回するように構成された会場の最初の広い部屋は展覧会タイトルの施された壁と映像上映のみで、(入場料の高額さを思うと)なんとももったいないと思わずにはいられなかった。
とはいえ、一点一点の作品に集中するにはこれくらい余白があったほうがいいのかもと気持ちを切り換え、メインのフェルメールまでの道程をじっくり鑑賞。印象的だったのはアンソニー・ホプキンス似の女性の肖像画(たぶんすぐわかるくらいには似ています)と食器や花々や果物などが溢れんばかりに描かれた静物画。空調の効いた場内だったが、みずみずしい果物やグラスの飲み物が描かれた画面を見ていると、美術館にたどりつくまでの炎天下の記憶が刺激されて思わず喉が渇いてしまった。漠然とした感想ではあるが、西洋の一般的な絵画ジャンルに則ってはいても、オランダ絵画の描写は他の地域の絵画よりどこか現実感や生活感が滲み出ていて落ち着く。こう感じるのは私だけかもしれないが。
修復後のフェルメールがそれぞれの鑑賞者にどう映るかはわからないが、画中画が与えた室内空間の圧迫感は、そんな市井の人々の現実感ある空間を演出しているのかもしれない。白い壁が持っていた神聖さよりは、当時の人々は美術をそのように受容していたということだろうか。象徴として描かれた画中画のキューピッドより、目に見えない神聖な存在としてのキューピッドを白い壁面に予感する私たちのほうが、絵画そのものよりよっぽどロマンチストなのでは。
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- mpv1836kumaさん、morinousagisanさん