鑑賞レポート一覧

すべて未知の世界へ ー GUTAI 分化と統合

すべて未知の世界へ ー GUTAI 分化と統合

大阪中之島美術館|大阪府

開催期間:

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おもろうて やがて哀しき 具体かな

会場に入るとまず目に入るのが押しボタン1個。田中敦子の作品とある。
いきなりわけのわからん具体作品の登場だなぁと思うも、作品には手を触れないでくださいとの注意書きはない。

あれ?ひょっとして?と、近くに立ってる係員のかたに聞く。
「これって押してもいいんですか?」
すると「どうぞ押してみてください。」

やれ嬉しやと、PUSH!
ジリリリリリリリリーーーーーーーーー!!!!!!!
会場に響き渡るベル。
火災報知器と同じ音だ。
すわ!火事か!と、客はみんな思うに違いない。

「長く押すと、ずっと向こうまで音がつながっていきますよ。」
と、係員さん。
二度目は押した指を離さずにいると、確かに20m先ぐらいまでベルの音が移動していく。

こりゃ開演のベルだな。
具体一座の大興行、始まり始まりぃーーー! ってとこだね。
先制パンチを喰らって、気分が高揚したとこで会場巡回へ。

具体美術協会。
1950年代に吉原治良の元に結集した前衛芸術集団だ。
正直、この手の現代美術系は苦手というか、見て良かったなあとか、感動したとかいう経験はほとんどないのだが、なんたって、具体ですから。
せっかくまとまって見れる機会を国立国際美術館と大阪中之島美術館が強力TAGを組んで提供してくださったことだしと、やって来た次第。
会場は上記二館に分かれており、当初は両方見てやろうと意気込んでまずは中之島美へ来たものの、二館分チケットを買うつもりが、間違って一館だけのを買ってしまった。
けど、結果的に正解だった。
片方だけで十分満足できたし、別会場もたぶん似たようなもんだろうと想像つくから。

で、その作品群。まあ、とにかくやりたい放題だ(笑)
もちろん作者さん方はいたって真面目に制作されているのだし、うちら素人がとやかく言うことは全くない。
私が生まれる前の時代にこんなトンデモないアートを出現させたんだから。

水前寺清子の歌ではないが、
♪人のやれなーいことをやれーーー
と、吉原さんの大号令で、これでもかとアイデアが噴出しまくってる。

私はいつもこういう現代美術を一括して「やったもん勝ち」と呼んでいる。
それは、70年前でも、今でも一緒だ。
でも今から70年前にこういうモンスター的芸術に出くわしたら、そりゃみんな驚くわな。

個々の作品の、まさに「具体的」感想は書きません。
まずは来て見て感じること。これが大事。
Don't think. Feel.
です。

それでも、中には著名な作家であり、作品はちゃんとあります。
教祖吉原の丸。
宙づり白髪の足描き。
田中の伝説的作品《電気服》。
電気服、さぞかし熱かったと思う。陶製ソケットに白熱電球なんだから(笑)
それよりも、感電の危険と隣り合わせだもんね。体を張ったアートとはこういうのを言うのです。
ちなみに、点灯タイムは30分おきです。

あ、書くの忘れてましたが、具体の作品には基本的に作品名はありません。
ですから、レビュー書くとき、対象とする作品は
「誰々の何々をどうこうしたやつ」と表現せねばなりません。
今後、当展のレビュー書かれるかた、覚悟しといてください。

私がいちばん興味深かったのは、作者のコメントが書かれたキャプションだ。
具体に所属し、作品を生み出す思想というか、信念が素直に述べられている。
どれもが、「そうだろうそうだろう。そうでないとやってられないよね。」というものばかりだ。
是非ご一読を。
これ、あまりにも面白いので読んでたら軽く1時間半経ってて、気づいたら閉館時間が迫ってた。
日曜の15時に会場入りして、あわよくばこの後に国際美術館の会場にも行ってやろうと思ってたが、とんでもなかった。

客層は、ほとんどが20歳前後の若者ばかりなのが新鮮だった。
おそらく、美大生や、芸術系専門学校生だと思う。
美術の未来を担う若人たちの眼に、具体はどう映ったか。
「こんなので一旗揚げられたのかあ」とうらやましがる者、
「あちゃー、俺がやろうと思ってたのに」と悔しがる者、
「ふーん、他にすることなかったのかね」と無関心な者。
百人百様の感性で、具体を記憶に刻んでほしい。

会場を出て、館の外へ出て、ふと「そういえばピナコテカはこの近くではなかったか?」と思い行ってみた。
館の南東側の交差点を渡って東へ100m歩けば右に三井ガーデンホテルがあり、その隣が庭園になっている。
阪神高速の入口に面したその場所こそが具体の聖地「ピナコテカ」が在った場所だ。
わずか18年の活動期間を駆け抜けた具体美術協会は吉原の死と共に消滅した。
なんとなく哀しくなったのは何故だろう。

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さいさん

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