メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年
国立新美術館|東京都
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2つのギリシャ神話
フラ・アンジェリコ、フィリッポ・リッピ、ベラスケス、レンブラント、次々と素晴らしい作品が繰り広げられワクワクが止まらない。一つ一つの感想を述べていたら切りがないのが、ギリシャ神話の物語でつながっている2つの作品を同時に観ることができたのは面白い経験だった。
その2つの作品とはジェロームの『ピグマリオンとガラテア』とティツィアーノの『ヴィーナスとアドニス』である。物語の概要だけを掻い摘んで説明すると、ピグマリオンとはキプロス島の王の名前。キプロス島は泡から生まれたヴィーナス(アフロディーテ)が貝の舟に乗ってやってきた島で、ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』でお馴染みの場所である。その島ではヴィーナスを守り神として崇めていたが一部の女性達が女神として認めなかったことに激怒したヴィーナスが彼女らを売春婦にしてしまう。そんな女性達に幻滅したピグマリオンは芸術家でもあったため理想の女性像を自ら彫刻するようになるが、その彫像に恋をしてしまい、ヴィーナスに願って本当の人間にしてもらう。その元彫刻がガラテアだ。ジェロームの『ピグマリオンとガラテア』ではピグマリオンがガラテアにキスをすると徐々に彫刻から人間になっていく様子が見事に描かれている。
その後ピグマリオンはガラテアと結婚し子供も授かり、ヴィーナスへの感謝を忘れず代々崇めてきたが、ひ孫のミュラが祀るのを怠ったことから、また怒りを買ってしまう。(まったく面倒くさい女神だ)クピドの矢によってミュラは父を愛してしまい、その禁断の子がアドニスでティツィアーノの『ヴィーナスとアドニス』に繋がるというわけだ。そのアドニスに恋をするとは、どういう了見だとヴィーナスに問いたくなるが「それは美少年だから。何か問題ある?」という答えが返ってきそう。しかし、ヴィーナスに二股をかけられていた軍神マルスが猪に化けて最後にはアドニスを殺してしまう。『ヴィーナスとアドニス』は嫌な予感がしたヴィーナスが「行かないで!」と狩りに行こうとするアドニスを止めているところだ。まさに因果応報、自業自得だが巻き込まれた人たちはたまったものではない。まあ、それがギリシャ神話なのだが。
ティツィアーノの『ヴィーナスとアドニス』は何枚もあり、工房を持つティツィアーノがどこまで関与していたか定かでないが、間違い探しで楽しめそうなくらい似た構図が幾つもある。犬が2匹か3匹かでプラド型とファルネーゼ型と分けることもあるらしく、メトロポリタン美術館の作品は犬が3匹なのでファルネーゼ型となる。また、多くのバージョンでは愛の終わりを示すべくクピドは後ろのほうでひっくり返っている(寝ている)が、手前で鳩を抱えているメトロポリタン美術館版のクピドが可愛くて個人的には好きだ。『ヴィーナスとアドニス』はルーベンスをはじめ他の画家も描いているが、ティツィアーノが一番ヴィーナスに冷たい描き方をしている気がする。ティツィアーノは女性に甘いタイプでは無かっただろうなと想像するもの楽しかった。
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