特別展 奈良ゆかりの現代作家展 安藤榮作 ―約束の船―
奈良県立美術館|奈良県
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生きなおす、時を刻む斧の音
安藤榮作氏を直接存じ上げないが、共通の知人が複数いたこと、知人にフクシマから自主避難した一家がいたことから、是非観てみたいと思い訪れた。
東日本大震災の津波で被災し、福島第一原発事故の影響から逃れるために、縁もゆかりも無かった関西・奈良県へ一家で避難された経緯は、館内で放映されているロング・インタビューでも詳細に語られている。(インタビューは奈良県立美術館のYouTubeでも公開されている。)https://youtu.be/EJ_tnwLoeS0?si=7sgvqgqIRahiW9y0
樹木に刻まれた斧痕のひとつひとつが祈りの真言のように感じられた。特に震災と原発をテーマにした作品は、どれも見るほどに吸い込まれ、時間を忘れてしまう。
「約束の船」の空間に入ったとき、一瞬阪神・淡路大震災で混乱する避難所をさまよっているうちに、遺体安置所になっていた教室の扉を開けた時を思い出した。あの時見た沢山のご遺体は、毛布に包まれていたが死後硬直でいろんな形をしていた。「約束の船」を形作っていたたくさんのヒトガタはとても穏やかな姿をしていた。たくさんの仏さまたちが穏やかにあの世へ旅立っていけますように。そして私たちを見守っていてくれますように。祈ることすら忘れていた当時を振り返った。
作品の中には、手で触れられるものや、音が出るものがあり、木の手触りや斧で刻まれた痕、そして張られた弦を爪弾くことができる。会場には作品に使われた材木の香りがそこかしこに漂っていた。
会期中には、公開制作の日が数日設けられており、現場には制作途中の作品と共に、削られた木屑もそのまま展示されている。
会場に漂う木の香りは、日本が森の国であること、そして林業が隆盛を誇っていた時代があったことを想い起こさせる。
同じ館内で奈良県立民俗博物館による「吉野林業の世界〜先人達の知恵〜」という展示が開催されてた。小規模な展示ながら、むかしの人々が自然に畏敬の念を払い、樹木の恵みに感謝して材を得てきた歴史がよく伝わる。
アートと民俗は全く別ジャンルだが、安藤榮作氏が作品に向かう真摯な姿と、先人が山を敬い林業を営みとして暮らしてきた姿には重なる部分が多い。実際の作品に触れて、生きなおすということを改めて考えさせられた。
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