SMBC ART HQ Part3「婁正綱展 - AWATA COLLECTION -」
三井住友銀行東館1F アース・ガーデン|東京都
開催期間: ~
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無題の対話:墨と心が響き合うひととき
東京・丸の内のオフィス街の一角で開催の中国出身の書画家による展覧会は、静謐な空間の中に深い余韻を残す作品群が並び、訪れる者の心を静かに揺らす。驚くべきことに、展示された作品のほとんどにはタイトルが付されていない(23作品中20作品)。鑑賞者の主観を尊重し、作品との対話を意図しているのであろう。
墨の濃淡と余白の使い方は、まるで呼吸するように自然で、見るたびに異なる印象を与える。ある作品では、筆の勢いが風のように感じられ、が改めて作品を前にすると、静かな湖面のような穏やかさが立ち上がる。書画家の筆は、風景や感情を描くのではなく、それらを映す鏡のような役割を果たしている。
作品を前にして、ふと幼い頃の記憶がよみがえった。雲を見上げては、動物や船、遠い国の城など、さまざまな形を想像して遊んでいたあの時間。形のないものに意味を見出し、自分だけの物語を紡いでいたあの感覚が、墨のにじみや余白の中に確かに息づいていた。タイトルのない作品たちは、まるでその頃の雲のように、自由に姿を変え、見る者の心に寄り添ってくる。
素晴らしい構成力だ。時間や国境を超えた普遍性を感じさせる。とりわけ、墨のにじみが意図的に残された作品では、偶然性と制御の間にある緊張感が美しく、見る者の内面に静かな問いを投げかけてくるようである。
作品はキャプションを「読む」で理解するものではなく、「感じる」ことなのだということを思い出させてくれる。タイトルのない作品たちは、言葉に頼らず、墨と余白だけで語りかけてくる。そこには、書画家の静かな挑戦が垣間見られる。先鋭的でありながら、優雅さを兼ね備える作品群に圧巻。注目していきたい書画の一人である。
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