企画展「デザインの先生」
21_21 DESIGN SIGHT|東京都
開催期間: ~
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デザインの「生徒」になりました
デザインの領域は浅学の身です。本展で取り上げる20世紀の6人の巨匠も、ブルーノ・ムラーリの名前を聞いたことがある程度。それゆえ、本展の鑑賞は、まるで巨匠先生の生徒になれたような、新鮮かつワクワクの体験でした。
六本木、東京ミッドタウンの奥にある21_21DESIGN SIGHTは初訪問。これぞ安藤忠雄といった建物に入り、階段を地下に降りてゆく。この動線は劇場感があり、気持ちが昂る。
地下階のロビーでは、6人を紹介する垂れ幕に迎えられる。ここで、ひと通り、顔写真と解説文で6巨匠のプロフィールを確認する。
最初の部屋では、6巨匠を紹介するビデオ映像。スクリーン壁の後ろ側の壁には一面に、6巨匠の年譜がラインチャートで描かれており、これが情報量、レイアウトともに出色。研究者向井知子氏の立派な「作品」です。写真撮影不可、本展用のWEBサイトでも紙媒体でも公開されておらず、生徒の身としては実にもどかしい。
次の広々としたメインの展示室には、巨匠ごとに区画割りして、作品と各人の世界観が展開される。
◇ ブルーノ・ムラーリ
「役に立たない機械」、絵本や玩具を通じた、ユーモアある遊び心。「Falkland」という照明器具の横には、そのデザインの着想から完成に至る12段階のプロセスを説明するボードあり。「P問いを置く → DP問いの定義 → ・・・ → SP素材と技術の実験 → Mモデル作り → ・・・」、と、講義してくれます。
◇ アキッレ・カスティリオーニ
この人の照明器具「アルコ」、大理石のベースから大きなアーチが伸びた先に丸いシェードの電球がつく製品。これ、有名なデザインですね、時々見ます。
◇ マックス・ビル
縦にも横にも置ける、立方体形の木のストゥール。これも見たことあるやつ。
◇ オトル・アイヒャー
ピクトグラム、ミュンヘンオリンピック関連のグラフィクス。東京オリンピックで登場したピクトが8年後のミュンヘンで、進化し洗練されています。
◇ エンツォ・マーリ
風貌から、神経質なほどの拘りの人のような印象を受けます。ろくろを使わず紐のような形状の粘土で編むように成形された丸皿が印象的。
◇ ディーター・ラムス
大戦後にブラウン社に入り工業デザインの革新を牽引したドイツ人。ブラウンの電気シェーバーは知っていましたが、オーディオもあるのですね。1960年前後のオーディオ製品、木をあしらった器具、レコードのアームの形状やつまみダイヤルの一つひとつ、夢中になって見惚れました。「良いデザインの10ヶ条」には納得。
展示室からロビーに戻るのに、折れ曲がる狭く暗い廊下を通る。コンクリート壁のところどころには、小さな文字で、先生の名言・至言が示される。「「世界の発明者」になろうなどとは考えないでください。そうした職業ではないし、そうあるべきではありません。自己批判とアイロニーを身につけてください。」等々、先鋭の含蓄ある名言が続きます。
最後にロビーでは、深澤直人氏、向井知子氏らが先生を語る約40分のインタビュー映像あり。これも初学者には聞き処満載の内容。
本展の主題がデザインの「先生」であるならば、観客は「生徒」、会場は「教室」です。そして、展示は「講義」、しかも、実に貴重で有難い講義だと思います。惜しむらくは、作品リストはなく、図録もなし。写真撮影も、展示風景は可だが個別の作品やキャプションは撮影禁止。特設WEBはそれなりに充実しているものの、「教科書」がないのです。おけげで沢山メモを取りました。これ、私のような出来の悪い初学生徒には、復習しづらい、なかなか厳しい教え方ですね。
好奇心を大いに刺激される展覧会=講義でした。会期末近くの夕方、若い人を中心に観客多数。
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