再興第109回 院展
北九州市立美術館|福岡県
開催期間: ~
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教師なし先輩あり 教習なし研究あり
院展に初めて行った。素晴らしかった。感動した。これまで行かなかったのを後悔した。
地方巡回は限られているし、入選全作品が来ることはない。それでもこの展覧会は行く価値があり、居住地から最も近い開催展には絶対に行くべきだと思った。
院展の歴史はググって読んでください。私も今回を契機にそうやって勉強した。
天心や大観の主導で始まった日本画家集団による日本画展という程度しか知らなかったので紆余曲折を経て今があるということを初めて知った。
そしてやってきた北九州展。出展作品のレベルの高さは何なんだ。
現代の日本画が伝統的なクオリティーを維持しつつも、ここまで多様で進歩的であることにまず驚いた。
どの作品も当展のために描き下ろされたのだろう、圧倒的な迫力と美しさをもって見る者を魅了する。
それは、物理的には1作1作すべてが大きく、ガラス板のないナマの画面であることが大きく寄与している。
しかし何よりも、作品から感じ取れるのは各作家さんの絵への情熱と絵描きとしての気高さだ。
出展作家さんは画伯と呼ばれる域のご高齢の方から、新進気鋭の若手の方まで様々だろう。ただし若手と言っても、おそらくポっと出の20代30代作家は少ないのではなかろうか。
出展数は図録表紙画1点を含め全63作。うち33作が同人と呼ばれる日本美術院の重鎮のかたがたで全ての巡回先で展示される。あとの30作は巡回先によって異なる一般会員からの公募作である。
じゃあ出展作は全部で何点あるかというと、図録掲載は276点。今回北九州に来なかった作品は200点以上もあることになる。秋の東京展には全作一挙公開されるのだろうか? うらやましい限りである。
ボヤいても仕方ないので、北九州展でのMy favorite作品を。
同人では
《映》 小田野 尚之
私が今いちばん好きな画家。一昨年足立美で初めて見て大感激。日本の田舎のローカル線や駅、田園風景画はスーパーリアリズム的写実画に近いけど、紛れもなく肉筆日本画の温かさがある。
ちなみに、当展図録表紙画も小田野作品。両方とも絵ハガキ買ったけど、どの作品でもいいので本物1枚買って家宝にしたいと切に思う。
《霞野》 手塚 雄二
流石の理事さん作品。昨年見た横浜そごうでの天井画展でのマイナス印象を一挙挽回。寛永寺にも行ってみないとね。
《博物学》 前田 力
総理大臣賞受賞作だからというわけじゃないけど、幻想的なパレオアートに魅了される。
一般では
《算》 川﨑 麻央
鎧兜の戦国武将が床几に腰かけ、軍配を手に策を練る図。兜からして武田信玄だろうか。21世紀の武者絵はここまで進化した。スゴイの一言。
《Genesis》 木下 武
暗橙色の画面は最初は何が描かれているかわからなかった。やや離れて見たらなんと、首長龍ではないか! これも恐竜画の進化形。恐れ入りました。
《雨道》 西澤 秀行
夜の飲み屋街裏通り、雨にかすむ電灯の光が水溜りに反射している。人は描いてないが、すぐにここを濡れネズミになってスナックへ向かう男が小走りに通って行きそう。
《錆彩》 幸 亮太
工場の床下部の鉄骨、配管、モーター類。むき出しの塗装は一部剥げかけていてサビも浮いている。その絵からは高温多湿の現場環境が伝わってくる。作家はそこで働いたことがあるのだろう。
上記二作に共通するのは「綺麗じゃない」光景をモチーフにしていること。それが何とも美しい。
薄汚れた路地裏歩いて飲み屋へ向かう、汗と油にまみれて工場で作業する、どちらも経験したことあるかたならわかってもらえると思う。
綺麗な風景や人物描けば綺麗な絵になるのは当たり前。日本画は特にそうだし、院展もほとんどが綺麗なモチーフの綺麗な絵だ。
もちろんそれは正しい制作姿勢であり、見る側が心地悪かろうはずもない。
ただ、そんな院展であえて綺麗じゃないモチーフを選ぶ画家がいることは私にとっては貴重であり最大級の賛辞を贈りたい。
今回の院展の作家さん方の略歴を大雑把に調べてみた。
院展の性格上、東京藝大卒が圧倒的に多いのだが、広島市立大出身者が結構いらしたのはちょっとした驚きだった。美術系学部では新興勢力なのだろうが、藝大出身の指導者層が充実しているのが理由かも。日本美術界の今後の台風の目玉になる大学かもしれない。
再興第109回院展。昨秋の東京展から始まった巡回はこの後、島根県の今井美術館、茨城県の天心記念五浦美術館です。
今はもう春の院展も始まっています。私みたいな院展見たことないってかたには特におすすめ。是非一度お出かけください。