カナレットとヴェネツィアの輝き
山口県立美術館|山口県
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水没広場の思い出
ベニスは私が行ったことのある数少ないヨーロッパの都市の一つです。
その旅はドイツ~スイス~イタリアの出張ついでのプチ観光みたいなもんで、イタリアではローマもミラノもフィレンツェもナポリも行かず、なぜかベニスだけ。滞在時間は半日程度のせわしないものでした。
しかし、海外で経験した最も衝撃的な出来事が起きたのはベニスでした。
鉄道でベニス駅に着いて、歩いてサンマルコ広場にやってきました。石畳の広大な広場に感激し、大聖堂の中に入って1時間ぐらい見学をしました。
そして再び外へと出てみれば、なんと、広場全面が水没してるではありませんか!!!
これには驚きました。まさか潮が満ちたら広場が海になるなんて聞いてませんでしたから。
あれから40年(きみまろさん風にw)
地盤沈下と海面上昇によるベニスの沈没危機は増しているような記事も見かけます。人類の英知で乗り越えてほしいもんです。
そんなベニスの風景画の巨匠による展覧会が地元へとやってきました。実は昨秋の上京時に見る機会はあったのですが新宿に来たときは歩き疲れてSOMPO美まで行く気力がなくなってスルーした展覧会でした。
その後、京都へ巡回し次なる開催地が山口となったわけです。
GW最初の祝日の山口県美。昨年はパスしたメンバーズに今年は入ることにしました。3500円で5回の企画展が無料です。
今回夫婦で2回分使用し、あと3回は国芳展と萩美での陶磁器展にでも使いましょうか。ちなみに企画展6回目からは半額、常設展はメンバーズならすべて無料です。
さて本題。
カナレットというのが画家の名前だとは知りませんでした。語感からしてcanal(運河)のイタリア語かなぐらいに思ってました。
水の都ベニスがテーマだから、運河とか水路とかゴンドラとかのイメージで。
そしたら生粋のベニス生まれのベニス育ちの風景画家、ベニスと言えばこの人みたいな大物でした。
ま、私の美術知識なんてこんなもんで、お恥ずかしい限りです(笑)
出展作品は全69点、うちカナレット作が18点。タイトルにデカデカと謳う割には少ないかな。でもその作品は極めて上質の素晴らしい風景画です。
その風景画をヴェドゥータと言うんだそう。これも今回学習した用語です。なんでも、カメラの原型みたいな箱形装置(針穴写真機ですね)で投影した像を基にした遠近法で描かれたとのこと。その装置の実物も置いてありましたが、触っていいのかどうか不明だったのでチラ見で終わりました。
カナレットのヴェドゥータは、そんな飛び道具を駆使しての細密風景画で、実に良く描けてます。今ならさしづめスーパーリアリズム写実画ってとこでしょうか。
ベニスという水上都市が出現して以来、そこは人であふれかえるイタリア有数の観光地で、訪れた人々はお土産にそのヴェドゥータを買い求めたんだそう。
写真のない時代だから当然そうなります。それほどベニスは特異で美しい町だということです。
カナレットの他にも多くの画家作品が出展されていて、どれもが正確な遠近法でのヴェドゥータです。
そしてその絵の特徴の一つが風景の中にこまごまと描かれた人物です。単に建物や橋や水路を描いただけなら退屈な風景画で終わってしまうきらいもありますが、そこにいろんな人々を描き入れることで絵に生命感が吹き込まれるのです。人のいないベニスの絵なんてつまらないですからね。
中でも私が惹かれたのはウィリアム・エティの《溜息橋》です。
水路を挟んで両側に聳える建物とそれをつなぐ高架橋を配した縦長シンメトリーの構図。右側が牢獄、左側が娑婆であり、罪人は左から右へと移送されるとき橋の上で見納めとなる美しい景色にため息をつくから溜息橋。
ほとんどのヴェドゥータが青空なのに対し、この絵は夜景です。濃紺の夜空には星一つ、黒緑の水路、月の光と影が塗り分けされた建物は、普通のベドゥータとは配色が全然違います。
そしてここに登場する人物は画面の右下隅、獄死した罪人とそれを抱えて運び出している獄吏です。こういう生々しい人の営みを目にすると、ベドゥータの別のリアルな側面を見たような感覚になりました。
絵ハガキあったら買おうと思いましたが、残念ながらありませんでした。
展示のラストには、特別付録的に印象派の画家によるベニス作品が出てました。カナレットが活躍したのは18世紀、それから100年以上経て描かれたベニスは色彩豊かな別の町のよう。印象派が印象派と呼ばれる所以はヴェドゥータのベニスと比べたらよくわかると思います。
時を40年前に戻します。私のベニス見物は水没広場の後、町中のレストランでスパゲッティー食べて、来た道を引き返し途中の土産物屋でベネチアングラス(?)のボトルシップを買って、再びベニス駅から夜行列車に乗り、翌日フランクフルトへと着き、日本への帰路に就きました。
今のところそれが最初で最後の渡欧。まだ美術に無関心だった20代の懐かしい思い出です、
企画展の後はコレクション展へ。
今回山口県美に高評価付けたいのは、シベリアシリーズをちゃんと出してること。
昨年は香月のメモリアルイヤーで同シリーズ全点一挙公開の企画展を行ったばかりですが、本年度はシリーズを4分割しての再登場です。
これはいいですね。他県から山口県美への来館者が見たいのはシベリアシリーズだ、出し惜しみするなと以前書きましたが、それに応えてくれました。今後も続けてください。
ちなみにカナレット展会期と並行しての第Ⅰ期は、応召から満州のハイラル駐屯までの13点。有名な《青の太陽》、《朕》などが含まれます。
シベリアシリーズに出てくる青色は3点にしか使われていません。今回はそのうちの2点が登場、《青の太陽》と《雲》です。
もう一つは来年1月~3月の第Ⅳ期、シリーズ最後の名作《日本海》まで待たねばなりません。
県美へのダメ出しも一つ。宣伝下手の山口県にあって、この県美も全然ダメ。よい事例がAAでの企画展ページ。
バナーがチラシの写真1枚だけってのが、ほんと信じられません。当展に限らずいつもそう。
今回のカナレット展の他館分を見ましたか。どこも展示作品画像を何枚も出してきてるでしょうが。
何がめんどくさいのか知りませんが、やる気あんのかと言いたい。
いつまでたっても県の魅力度が下位に低迷してる理由の一つはこんなところにあるのです。猛省を促したい。