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香月泰男のデッサン・素描展

香月泰男のデッサン・素描展

香月泰男美術館|山口県

開催期間:

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世界一美しい玉子の絵

私が香月の絵でいちばん好きなのは実はシベリアシリーズじゃないんです。
それは1956年6月19日に描かれた1枚の素描《玉子》です。
長円形の皿に置かれた5個の卵を鉛筆で描き、水彩とクレヨンで薄く着色してあり、色はほとんど感じられず、パっと見は普通の鉛筆線画です。

その線がすごいのです。
迷いなくスっと引かれた玉子の輪郭に途切れはなく1個1個を一筆で見事に描き上げています。
しかもその玉子にはどこにも歪みはなく、誰が見ても普通のニワトリの卵です。
こんなに美しい線画は私の美術鑑賞史上、唯一無二です。
初めて見て衝撃を受けた絵はいくつかありますが、素描ではこれだけです。

そもそもデッサンの類は、下書きとか未完成とかがほとんどで、作者としても現役中は展覧会に出したりはしません。
当然香月もそうだったでしょう。しかし、鉛筆書きのデッサンでもちゃんと色を塗って仕上げて完成させています。
それはもうデッサンとは呼べないのかもしれません。
香月の絵にはそういうのがほんとに多い。でもそれが素晴らしい。彼は「着色素描」と名付けていました。
《玉子》もそうですが、日付もサインも入れて立派な作品とみなしています。
それらがのちのち展覧会を飾るとは思ってなかったかもしれません。
でもそれらの小品類を託された家族の方は油絵であろうと鉛筆画であろうとどれも同等に扱って保管してくださってました。

今開催中の香月美術館企画展はそんな素描とデッサンを集めたもので、彼の一筆入魂の線画がどんなものか、初めての方にもしっかり見てもらえる好企画です。
デッサンばかりじゃ飽きるとおっしゃるかたには、油絵の優品も途中途中で出ています。

画家、イラストレーター、漫画家、肩書はどうであれ、私が上手いと思う条件の一つが「フリーハンドでまっすぐな線が引けること」です。
「まっすぐ」は直線にも曲線にも当てはまります。要は一気に線を引いてそれが美しいこと。
日本画洋画、古今東西を問わず、それをやってのける作家はみんなリスペクト対象です。
就中、私の2TOPは鉛筆なら香月、筆ならフジタです。
どなたも一度、線の美しさに目を向けてみられてはどうでしょう。

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