
特別展 空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン
名古屋市美術館|愛知県
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油断大敵。温かさの中にゾッとするほどの風刺。
フォロンの絵といえば、やわらかいグラデーションの水彩画が頭に浮かぶ。
たしか学生の頃に美術だか社会だか、なにかの教科書で見たことがある。
前半の展示は帽子や壁掛けフックの穴が目、目、口だとすると、ほら顔に見えるでしょう?といういかにも人間らしい視点が共感を誘いクスッと笑えるが、矢印の標識や帽子など、その後の作品のモチーフとなるものがこの頃から見受けられ、後半の展示につながる心地よい既視感があった。
同郷のルネ・マグリットに影響を受けたと解説にあったのも、山高帽の男や頭が果物やスクリュードライバーになったブロンズ像などから頷ける。
ドローイングの線に味があり過ぎるというありふれた表現しかできないのが悔しい。
奥さんの影響で水彩画を習得とあったが、
まわりの環境や人から深く影響を受け、それを自分のものにして作品として世に出した人だ。
後半の展示に行くにつれて、優しい色合いから段々と深く重苦しい色合いに変わり、風刺の効いた社会問題を表したものになっていく。見ていて辛くなる絵もいくつかあったし、一昔前に描かれたとは思えないほど今の社会情勢にもぴったり当てはまるものもあり、キュレーターさんのセンスの良さもうかがえた。
特筆すべきは世界人権宣言。故谷川俊太郎さんの日本語訳との展示は、当時と変わらない下手したら状況が悪化した、いま改めて見る価値がある。
最後の空っぽの男性の像は思わず声をあげてしまうくらい本当にゾッとした。
安心する温かさと意外な冷たさを両方感じる、あの頃と何も変わらず問題が山積みのいま、見るべき展覧会です。
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