
〈若きポーランド〉—色彩と魂の詩 1890-1918
京都国立近代美術館|京都府
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ポーランド美術のある側面を見事に切り取っています
ポーランドの近代美術をこれほどまとめて見る機会はなく(戦後のポスター展はありましたが)、とても面白い企画でした。
とくに首都ワルシャワではなく古都クラクフの博物館の企画で、当時の芸術運動「若きポーランド」に参加した芸術家の作品ですから、この機会を逃すとなかなか見られないものも多かったのではないかと感じます。19世紀後半から前世紀端境期に活躍した芸術家というと、どうしてもウイーンやパリに注目が行きがちですが、ポーランドでも独自のジャポニズム受容や日本美術の研究があったり、分離派の影響もあり、かなり面白い絵画運動が起こっていたということがよくわかります。
さすが、もともとはヨーロッパ大国です。絵画の技術もさることながら、色彩やモチーフに素晴らしいものがあります。
個人的には、スタニスワフ・ヴィスピャンスキ、そしてパリで活躍した女流画家オルガ・ボズナンスカが素晴らしいと感じました。
一方で、他国に支配されて独立を奪われ、一方で民族主義が勃興した19世紀に、ナショナリズムが強まったと思われるポーランド。それを美術的な側面から切り取ったとき、当時の芸術潮流と主権を失っていたが故にポーランドの民族意識が高まり、「若きポーランド」と呼ばれた画家たちの営為があった……。
ある意味で、美術の歴史的な動きをここまでナショナリズムで見る展覧会は最近少なかったと思いますが、ポーランドとくにクラクフでは、誇りをもって展示しているということが、資料映像でもよくわかりました。
ウクライナ情勢は、今、ポーランドにとって他人事ではなく、クラクフの博物館が日本に対してこのような展示を持ってくるエネルギーがあるということですし、ある意味で現在の世界情勢を反映しているのでしょう。
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- morinousagisanさん