4.0
会場を泳ぐ魚と天井を埋める「ふきだし」、そしてマリリン・モンローの筆跡を箱根で鑑賞する
フィリップ・パレーノの個展は2019年にワタリウム美術館で見て以来、久しぶり。ちなみにワタリウムで見たときは「これを見るために1000円払ったと思うとかえってすがすがしい感じがしなくもない」と思ったらしい。つまり、よくわからなかった。今回はどうだろうか?と思いながら、アクセスが猛烈によくなった箱根のポーラ美術館へ。とりあえず、反省も込めて、移動中に各メディアに掲載されたレビュー記事をチェックしてから行きました。
まずは《私の部屋は金魚鉢》(2024)。魚の形をした、ヘリウムガスの入ったバルーンが展示室内を漂ってます。バルーンには触っていいので、適当に泳がすことが出来る。ときどき、監視員の方が走り出して、部屋の外に逃亡しようとする魚を連れ戻したりしている。魚の目が妙に大きくて、鮮やかなのが気になる。
次は《マリリン》という映像作品のはずが、部屋は妙に明るく、スクリーンに丸いオレンジ色の光が当たっていた。よく見ると、スクリーンの向かい側に大きな窓があって、その先の建物の外にオレンジ色の丸い反射板を備えた装置が設置されている。その装置がオレンジ色の光を部屋の中に投射しているのでした。これも作品の一つで《ヘリオトロープ》(2023 / 2024)というもの。そして、自動ピアノが何かを演奏していた。しばらくすると、室内が暗くなり、カーテンが自動で閉まり、映像作品《マリリン》が始まる。マリリン・モンローが一時期住んでいたニューヨークの高級ホテルのスイート・ルームを舞台にした作品で、マリリン・モンローは登場しないが、その雰囲気だけが伝わってくる映像。特に万年筆で手書きのシーンがあって、おそらくはマリリン・モンローの筆跡を再現しているのだろうけど、どうやって再現しているかは、作品を最後まで見るとわかるようになっている。このほか、コウイカを主人公にした美しく神秘的な映像作品とか、天井をひたすら埋め尽くす吹き出し型のバルーンとか、諸々楽しめました。
とまあ、いろいろと仕掛けがあって、作品解説を読みながらその仕掛けの意味を探りながら拝見しました。作品解説は各作品のキャプションのところにある、QRコード経由で読むことになります。こうなると、観光客風の方々がちょっとのぞいて、ナンじゃこりゃという感じで、すぐに去って行くのがもったいないなあ、という感じです。まあ、しょうが… Read More