4.0
禅僧のポートレイト、意外と表情豊か
京都に来たときはできるだけ行くことにしている相国寺承天閣美術館。今回は頂相の展示です。「ちんそう」と読みます。お坊さんのポートレイトです。地味そうな気がしたんですが、見たところ、なかなか皆さん個性的です。
禅宗では達磨を初祖にして、その教えを師から弟子へと受け継いでいく。受け継いだ象徴として師の肖像画や袈裟を弟子が受け取るそうです。その肖像画を頂相と呼んでいるそうです。相国寺には禅宗の歴代の祖師を描いた列祖図が複数あって、今回は相国寺本山に伝来する列祖像三十幅を拝見しました。1655年(承応4年)の作だそうです。初祖の達磨から始まって、達磨に肘から下を切り落として差し出した「慧可断臂図」の慧可が二祖といった具合に連綿と、30人の高僧の頂相が並ぶわけです。
今回、拝見した「相国寺本山に伝来する列祖像三十幅」は、狩野派に一括発注されたそうです。興味深いのは誰が描いたかが分かっていること。そして僧の序列が高いと、狩野派での序列が高い絵師が描いているらしい、というあたりです。例えば達磨さんは狩野探幽、二祖の慧可は狩野安信が描いている。
肝心の作品ですが、圧倒的に慧可が印象的です。先日見た雪舟の「慧可断臂図」の慧可はしかめっ面で怖い感じですが、頂相の慧可はニヤリとした感じで、ちょっと話してみたくなる。ほかの方々もしっかり描き分けられていて、いいんですが、特に慧可が印象深い。展示替え後の後期も見たいのですが、京都は少々遠いです。