5.0
富本憲吉の主要全作品鑑賞は圧巻
開館周年記念を開館第一弾の富本憲吉をとりあげた展覧会で、憲吉と同館の関係を掘り込んだ美術講座も拝聴し、いかに記念すべき展覧会であるか実感できた。展示は、180点もの圧巻の内容で、普段は過去にいくつかの美術館で行った憲吉展の図録でしか見たことのなかった作品を実見することができ、写真ではわからないスケール感(思っていたより大きいとか)と色味(思っていたより落ち着いた色味とか)を体感することができた(所蔵作品以外も多数!)。また、憲吉の製作を時代・作品のくくりで展示されていることにより、作家の芸術的変遷が分かりやすい展示であった。また、郷土画家として奈良の風景を愛した作家の思いも伝わってきた。しかし、なんといっても建築図案から入った憲吉の真面目な図案的文様である一方、手作りで一つ一つ描いていたというその手のぬくもりが直に感じられたことは直に作品を見なければわからないことだった。そして圧巻は、未完で終わった作品に対峙した時の、製作過程を体感できた時であった(羊歯文様を描く前の下図の線だけしか引かれていない部分が見える)。惜しむらくは、鑑賞時間が足りなくなりビデオを鑑賞できなかったことだ。聞くところによると、製作風景を動画で見ることが出来たらしい。できれば、将来の展覧会でも流していただきたい。