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東洋での自然のとらえかた
中国王朝は常に北方民族と対峙する歴史でもありました。
匈奴やスキタイに始まる騎馬民族は常に辺境地帯で一進一退を繰り返してきました。
漢民族の王朝に代わって王朝が誕生することもしばしばありましたが、
彼らはいつも漢文化に憧れ、受容してきたように思います。
中華思想の朝貢関係にあった日本も例外ではありません。
古い昔から大陸の文化に憧れ、学び、受容し、日本の文化の中に取り入れてきました。
本展は、漢民族の明と女真族の清王朝、15~17世紀に栄えた中国王朝の絵画についての展覧会でした。
中国では、科挙試験に合格した官僚たちつまり「士大夫」が余技として文人画を描いて楽しんでも居ました。
それに大きく影響を受けたのが日本の絵師たちだったでしょう。
深山幽谷に棲む隠者の生活に憧れ、遥々と友を訪ね、断崖絶壁の山々を越え、小さな橋を渡って、山深くにある友の庵を訪ねる絵がなんと多いことか。
前に広がる湖に小さな船を浮かべて遊ぶ。
途中崖の上から目の前に落ちていく大きな滝を見上げる。
自然は雄大で、ヒトはちっぽけに描かれています。
自然のとらえかたが西洋画とは大きな違いの様に感じます。
無数の細い線で表され山水画?風景画はまるで鉛筆で描かれているようにさえ見えてきました。
精緻に刷り上がった西洋の銅版画ともまた違った印象です。
独自の文化を持った沖縄は、中国王朝と直接朝貢貿易を行っていたため、美術においても直接影響を受けたようです。
美術においても日本から多くの絵師(画僧など)が中国に渡って学び、中国からも多くの人が来日して大陸の文化をもたらしました。
なら、反対に日本から逆輸入のアートはなかったのでしょうか。
西洋にジャポニズムが流行したような。
そんなことも考えた展覧会でした。