5.0
凛とした強い心と眼差しに憧れを抱いた
当時は完全な男社会だった舞台美術の世界で 女性舞台演出家として草分け的存在だった朝倉摂さん。
演劇という 虚構の中で輝くリアリティと実感が大事と摂さんもおっしゃられてるように
絵画や彫刻と違って 舞台美術は作品としての実体が残らない。
儚くもあるけれど 思い切った実験的な試みに挑戦できるのも魅力の1つ。
学生時代に舞台演出を専攻していて何度となく目にした摂さんの作品。
舞台写真や図面や模型、緻密なスケッチたちに再び出逢えて懐かしさと共に、時間を忘れて見入ってしまった。
また今回 朝倉摂さんの日本画作品にも初めて触れて 作風の変遷には驚きでした。
伊東深水ばりの美しい美人画からキュビズムやフォービズムを彷彿とさせる 荒々しい線と油絵のように描き盛られた激しいタッチ。
戦後復興からの高度成長期の社会への反発からなの?
富裕層に生まれ何不自由なく英才教育をうけてきた彼女が 顔の表情がわからないほど煤けて痩せこけた底辺の労働者や その子供達や退廃的な情景を描き続けていたのだろうか?
また反面で 水彩画で描く絵本の挿絵は色とりどりで、どこまでも透明感があって慈愛に溢れている。
同じ1人の中から生み出される
さまざまな創作のカタチを一挙に鑑賞できて改めて
朝倉摂さんにリスペクトです。