5.0
甲冑inホワイトキューブ
ホワイトキューブ批判も、すでに見慣れたものとなって久しいけれど、やはり、結局のところは「活かし方」次第だと思う。ルーティーンにしてしまうのが悪いだけで、ホワイトキューブ自体が悪いわけではない。逆に、今回の展示によって、ホワイトキューブのポテンシャルまでも、見せつけることになったように思う。
コンセプトは展覧会詳細に示された通りだけれど、ポイントは「引用」である。
つまり、いにしえの甲冑を、どこに再配置するか、そのことによって、どのような化学反応を起こせるか、である。
まず、私個人の体験でいえば、甲冑は、これまで薄暗い照明の中、正面からだけしか見たことがなかった。それが、白く光る空間におかれて、全方位からみることができる。ライティングも含めて、ディスプレイが見事。
そして、現代アートと並置することで、周囲に同時代のアイテムが置かれるような博物館の展示からは、装いは一新される。甲冑にもともと備わっていた造形的な細工の美が、いやおうなく目立つ。その結果、ともすると、現代アートよりも現代的に見えて来る。
こうした意味で、とてもこの美術館らしい、素晴らしい展示だった。