5.0
唯一無二
2018年末に、東京ステーションギャラリーで開催されていた吉村芳生の個展を見逃してしまったことが悔やまれていましたが、ありがたくもそごう美術館で開催され、観賞することができました。
吉村芳生の生の絵は、想像以上の画力・迫力で、圧倒されるものがありました。
白い背景に金網だけをひたすらリアルに描き続けている絵や、友人たちの人物写真を表情豊かに手書きする絵など、いくつかのモノクロの作品シリーズがある中で、突如として鮮やかな色彩が現れるのは、インドを訪れてからのことでした。
その色彩の鮮やかなこと!インドの様々な観光地を背景に中心に大きく自画像を描いているシリーズは、インド各地の魅力が映し出されていて、一見、無表情にも見える自画像ですが、それまでの画風との変化を思えば、インド訪問の経験が、画家の心を大きく揺さぶったことが作品からも伝わってきます。
後半の草花を描くシリーズは、実際の花のサイズが、何十倍にも拡大されて描かれているものも多く、写実性とか色彩の美しさとか、そういうものを超越した「リアル」があって、その「リアル」とは、描かれているのは草花なのですが、まるで画家と対話をしているかのような、生々しさがあって、永遠に眺めてつづけていたい絵の力と魅力がありました。
2013年に、病のために63歳で亡くなられたとのこと、本当に惜しまれます。吉村芳生さんの創作活動の全体にさらなる興味の沸く、すばらしい展覧会でした。