5.0
行ってきました
齋藤芽生と初めて対面したのは、2009年に国立新美術館で開催された「アーティストファイル2009」だったと記憶している。ただその会場でこのアーティストの作品に心が大きく揺さぶられた記憶がない。しかし、その後この展覧会の図録を見返していくうちに、あの世界に引き摺り込まれていたのだ。その時は「花輪其の六・名前のない町」などの花輪をモチーフにした作品がとても印象的だったことをよく覚えている。そして、その後刊行されていた“徒花図鑑”は、地元の本屋で取り寄せて購入したことを覚えている。まるで、見てはいけないものを見るような思いでその画集と対峙したはずである。ただその後なかなかこのアーティストの展覧会を訪問することができず、年頭にこの開催を知った時には“何をおいてもこれだけは行かねばならぬ!”と云う強い決心を抱いたのである。
今回は“徒花図鑑”の作品が多く展示されており、オリジナルが持つ迫力にまたまた引き込まれていた。中でも「間男蔓」は不気味さとエロティックさが同時進行しているように思えた。この表現は齋藤しか創り出すことのできないものであろう。
このような男女のドロドロした人間関係をそれなりに美しく表現するのと同時に“徒花園”の「毛玉鶏頭」のようについニヤッとしてしまう作品を創り出せるのもこのアーティストの魅力である。“毒花図鑑”の「フタマタカキツバタ」や「ザンゲーノ・ワルーゴ・ザンシタ」などは私の好みに完全合致して、作品に見入ると同時についニヤニヤしてしまっていた。絵画の展覧会で私がこのような心境になるのは非常に珍しい。特に後者の“わるうござんした”の区切り方が絶妙で、この点にも心が大きく動かされてしまった。また「恋消葛」の前では、遠い昔のあまり蘇ってほしくはない思い出が走馬灯のように私の中に浮かんできてしまったのだ。その結果、次の作品にのめり込むまで少々落ち込んでしまっていた。
1995年の“日本花色考 二十四の図案 二十四の読解”は、初対面作品だった。この作品で初めて齋藤芽生が女性であることを知ったのだ。かなり長い間ファンを自認しておきながら、アーティストの性別をまったく知らなかったことに我ながら驚いている。さてその“日本花色考 二十四の図案 二十四の読解”で気になったのは「荒波ホテル」、「汁を洩らす」と「燕三条」の3点である。前者の2作品は齋… Read More