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工程は同じでも…
陶芸作品の展示をじっくり見るのは初めてでしたが、かなり楽しめました。
中国や日本の陶芸技術を参考にしていたと解説にある作品がありましたが、やはり国が違うと文化や表現の違いが作品にも現れており面白かったです。
最近の北欧ブームの根源が感じられるような素敵な展覧会だったと思います。
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これまで日本では、おもにフィンランドのプロダクト・デザインが紹介され、作家による芸術作品については十分とは言えませんでした。
本展は、フィンランド陶芸の体系的な展示を日本で初めて試み、その黎明期から、最盛期ともいえる1950年代・60年代までを名作と共に辿ります。
19世紀末に流入したアーツ・アンド・クラフツ運動の影響を大きく受けたフィンランドの美術・工芸は、1900年のパリ万国博覧会で高く評価され、世界的な注目を集めました。
この成功は、当時ロシアからの独立を目指していた民衆に誇りと自信を抱かせ、建国の原動力ともなりました。また、フィンランド陶芸の萌芽もここにあります。
そして、1930年代後半から始まるフィンランド陶芸の躍進の下地となったのは、美術工芸中央学校における陶芸家育成と国を代表するアラビア製陶所美術部門の活動でした。
この美術部門では、作家たちによる自由な創作が許されており、ユートピアともいえる環境から数々の傑作が生み出されていくこととなります。国を挙げて芸術、文化の振興に取り組んだ結果、フィンランド陶芸は20世紀中期には世界的な潮流を生み出すまでに成長します。その既成概念にとらわれない豊かな表現は、人々を魅了し、日本の工芸界にも大きな影響を与えました。
本展は、フィンランド陶磁器やガラス作品の世界的コレクターであるキュオスティ・カッコネン氏のコレクションを中心に、「フィンランド陶芸の萌芽」「近隣諸国の影響を受けて」「フィンランド陶芸の確立」「フィンランド陶芸の展開」「プロダクト・デザイン」の5章によって構成します。知られざるフィンランド陶芸の世界との出会いは、その源泉に触れ、そして奥深さを知る、またとない機会になるでしょう。
◆ 1. フィンランド陶芸の萌芽-ナショナル・ロマンティシズム
19世紀末にフィンランドにもたらされたアーツ・アンド・クラフツ運動の影響による伝統への回帰や、ロシアからの独立の気運も相まって、当時世界を席捲していたアール・ヌーヴォーは、同国内においてナショナル・ロマンティシズム(民族的ロマン主義)と称され、独自の発展を遂げることとなりました。そして1900年のパリ万国博覧会において国際的な評価を受けたことが、さらなるナショナリズムの高揚と国内の手工業分野の発展を促しました。本章では、この時期に創業したアイリス工房やアラビア製陶所で製作された、壺や花器などを紹介します。
◆ 2. 近隣諸国の影響を受けて-アール・デコ
1920年代には、近隣諸国の影響を受けてきた陶磁器のデザイン性を高めようという動きが生じ、そして1930年代後半になると、フィンランド陶芸が躍進を見せます。この下地となったのは、ヘルシンキにあった美術工芸中央学校での陶芸家育成と、国を代表するアラビア製陶所・美術部門の活動でした。後者では作家たちに自由な制作の場が与えられ、まさにユートピアといえる環境から、数々の傑作が生み出されていきました。本章では、テューラ・ルンドグレンやミハエル・シルキンらによる陶彫を中心に紹介します。
◆ 3. フィンランド陶芸の確立-オーガニック・モダニズム
第二次大戦後、フィンランド陶芸は国内に留まらず、ミラノ・トリエンナーレなどの国際展において、世界的に評価されるようになりました。本章では、オーガニック・モダニズムと称された伸びやかで有機的な形態が特徴的なトイニ・ムオナの筒花瓶や、立体造形として陶芸を追求したキュッリッキ・サルメンハーラの壺などを紹介します。
◆ 4. フィンランド陶芸の展開-ピクトリアリズム
フィンランド陶芸を牽引した作家の中には、陶芸の概念を塗り替える作家も現れました。本章では、ビルゲル・カイピアイネンおよびルート・ブリュックらの作品を通して、伝統的な陶板画とは一線を画した、詩情豊かな絵画的表現(ピクトリアリズム)の陶板や皿を紹介します。
◆ 5. プロダクト・デザイン-フィンランドと日本
おもにアラビア製陶所で生産されたフィンランドの日用品には、隣国スウェーデンの影響が色濃くありました。しかし第二次大戦後、新たなデザインが求められると、同国に倣った機能主義に加えて、日本の美術や工芸にも影響を受けた製品が国内外で人気を博しました。本章では、日本でも人気の高いカイ・フランクらの食器セットなどを紹介します。
会期 |
2018年7月14日(土)~2018年9月6日(木)
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会場 |
目黒区美術館
![]() |
住所 | 東京都目黒区目黒2-4-36 |
時間 | 10:00~18:00 (最終入場時間 17:30) |
休館日 |
月曜日 7月17日(火)は休館 ※ただし、7月16日(月・祝)は開館 |
観覧料 | 一般 800円(600円) 大高生・65歳以上 600円(500円) 小中生 無料
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TEL | 03-3714-1201 |
URL | https://mmat.jp/ |
4.0
陶芸作品の展示をじっくり見るのは初めてでしたが、かなり楽しめました。
中国や日本の陶芸技術を参考にしていたと解説にある作品がありましたが、やはり国が違うと文化や表現の違いが作品にも現れており面白かったです。
最近の北欧ブームの根源が感じられるような素敵な展覧会だったと思います。
5.0
アラビアやアイリスといった工房から、輩出されていった、個性的で魅力あふれる作品を生み出した作家たちの作品が一堂に観られる楽しい展覧会でした。
北欧らしい、動物や自然のモチーフ、独特の造形や色彩だけでなく、アジアや欧米と違う、温度感、空気感も感じられて、フィンランドを旅してみたくなりました。
5.0
作家性の高い多彩な陶芸作品を系統立てて展示。私が特に気に入ったのは、ミハエル・シルキンのチャーミングな彫像たち(動物の描写がたまらん)と、ルート・ブリュックの陶板たち。ルートの陶板は、不思議な色合い&トロ〜リ質感がたまらない釉、自由で温かみのあるライン、技法が気になる模様をはじめ見どころ満載(トロ〜リに触りたい衝動を、がんばって理性で抑えました)。このページのメイン写真「聖体祭」を見て「なんだか素敵!」と思った方は絶対行きましょう。ほかにもしびれるルート作品がいくつもありますから。透かし彫りしたところに透明な釉を充填する「蛍手」という技法でつくられた作品群もよかったなぁ。作者の女性比率が異様に高いのも、なんだか素敵です。工芸好きも絵画好きもデザイン好きもきっと楽しめる好企画。
4.0
先日、ヘレンド展に行ってヨーロッパの陶器について興味が増したことが訪問の契機でしたが、フィンランドについては「アラビア」という名前以外、ほとんど予備知識はありませんでした。実際、ヘレンドの繊細さと比べて対局にあると言ってもいい印象の陶器でしたが、アラビアが日用品ととともに、アート作品の制作部門を別に持っていて、それらを組み合わせようとしたアプローチ自体、ユニークに感じました。また、近代までスウェーデンとロシアに従属し、陶器製作の歴史が浅いがために海外のテイストを吸収し、ある意味、時代を無視して、キュビズムや曜変天目茶碗を思わせるような、自由な作品を作っていったフィンランド陶芸の系譜を知る機会となりました。ちなみに、展示されていたキルタ・シリーズを見てふと、森正洋氏の作風を思い起こしました。カイ・フランク氏とほぼ同時代で、どちらがどちらに影響されたのか、ちょっと興味深いですが、余り考えるのはヤボなのかもしれません。
ところで、今回のキュレーターの方は、もっとインパクトのある作品があったのに、どうしてポスターにシンプルな細長い花瓶3本を選ばれたのか、ナゾです(ムーミンのニョロニョロをイメージさせたかったのかな)。
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ルート・ブリュック 陶板《聖体祭》 1952-53年/ アラビア製陶所
コレクション・カッコネン photo:Niclas Warius
アルフレッド・ウィリアム・フィンチ 花瓶 1897-1902年/ アイリス工房
コレクション・カッコネン photo:Niclas Warius
アラビア製陶所美術部門(1945年)
photo: Arabia