徳川美術館展 尾張徳川家の至宝
サントリー美術館|東京都
開催期間: ~
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名品続々 流石尾張徳川家 凄いです
江戸時代の大名家、御三家筆頭格の尾張徳川家に伝えられた重宝、いわゆる「大名道具」を収蔵する徳川美術館(来年開館90周年なんだとか)。何時か行ってみたいと思ってたんですよね。これまで京都奈良へは結構行っても、大阪や名古屋へは、全く行けていません。今の私はもう遠出は出来ない状況なので、今回あちらから来て頂いて、感謝感激です。徳川美術館さんのコレクションは、その来歴が明らかなこと、そして保存状態が良いことがなどが特徴と言われます。つまりは折り紙付き超高品質のお宝たちにこの夏、六本木で会えちゃうということ。ホント、ワクワクです。一部展示替えもあるそうで、できれば二度は、観に行きたいところですが。
今展、武具や刀剣を紹介する「尚武 もののふの備え」から始まり、茶道具などを扱った「清雅-茶・能・香-」、そして書や婚礼調度などを取り上げた「求美」の全3章に加え、特別公開として国宝である《源氏物語絵巻》と《初音の調度》の展示で構成されていました。
展示室に入ると、まずは甲冑、大きな葵の御紋を後ろに配し、スポットライトを浴びるヒーローよろしくデンと構えた《銀溜白糸威具足》が目に入ります。尾張徳川家初代義直が、あまたある甲冑の中で最も愛用したといわれ、迫力満点でかつ見惚れるほど、とても美しいです。それから左に家康の《陣太鼓》、右に尾張14代慶勝所用の《葵紋蒔絵糸巻太刀拵》が置かれ、初っ端から徳川美術館に飛んで行ったかのような気分になれる展示でした。その後も徳川家ゆかりの武具刀剣類が並びます。そして、尾張徳川家では最も重要な刀剣として代々の当主に受け継がれ、当主の身近に置かれていたという脇差、これを帯びて出陣すると必ず勝利を得たという《物吉貞宗(重文)》です。大日如来と金剛夜叉明王の梵字を表裏に刻み、懐中の守り本尊などと同じ、武器でありながらある種の信仰の対象に近い存在だったのではと思われます。更に、鎌倉時代の名工長船長光の代表作の一つで、織田信長から本能寺の変後明智光秀が所持した太刀《津田遠江長光(国宝)》などなど、まさに名品揃いでした。刀剣そのものには疎い私でも、聞き覚えのある品が並びます。私の好きな刀装具類も、観ごたえのあるものが並んでいました。伝徳川家康所用《丸木橋図三所物(小柄・笄・目貫)》、彫りは赤銅の地に波文が肉彫、丸木橋が重厚な高彫で、見事です。無銘ながらその構成などから、後藤家初代祐乗作(現存する祐乗の作品には自署在銘のものは無く、重文《獅子牡丹造小さ刀拵》も無銘だとか)と言われているらしいです。ここまででかなりお腹いっぱいの感じですが、まだまだこれからでした。
さて、足利将軍家は、猿楽=能を庇護し、高度に洗練された舞台芸能に育てあげました。「能」は大名たちにも大いにもてはやされ、公式行事に演能は欠かせぬものとなりました。江戸幕府もこの伝統を承け、「舞楽」が公家の式楽であったのに対して、「能」を武家の式楽と定めました。御殿の前庭には能舞台が設けられていて、慶事や公式行事の際には必ず「能」が演じられ、それを見ながら宴うたげは進められました。そのため各大名家には能役者が召抱えられ、各種の曲目に応じられるように、いろいろな装束・能狂言面・小道具が備えられ、年中行事として催しに大名自身も謡い、時には自ら舞うことも必須の教養とされていました。よって「大名道具」に豪華な能装束や能面、楽器、は欠かせないということなのでしょう。「能」以外にも「茶」や「香」も武家の必須教養だったわけで、江戸時代の大名にとって芸道は、政治的地位を確立し、家格を高めるための重要なツールとなっていました。こちらで紹介の能面は《狂言面 狐 金漆銘「狐」 朱漆銘「出目若狭大掾入道 藤原寿満(花押)作」(江戸時代) 》、《能面 孫次郎(江戸時代)》伝 出目満茂、《能面 小尉 朱漆花押(桃山時代)》伝 井関に、豪華な能装束や楽器が並びます。「茶」では利休等の手による茶道具や、《唐物茶壺 銘 金花 大名物(南宋~元時代)》《織部筒茶碗 銘 冬枯(重文)》、宮本武蔵筆《蘆葉達磨図》など、それから「香」ではかの有名な《蘭奢待》も、《青磁香炉 銘 千鳥》や《銀檜垣に梅図香盆飾り(重文)》などと、本当に名品お宝続々です。
いよいよ「求美」章では、高い技術を存分に注ぎ込んだ調度品や着物、書画、楽器に加え、かるたなど遊興のための道具が展示されています。超絶技巧が連続する章でもあるので、単眼鏡をお持ちの方はお忘れなく、です。べっ甲や鍍金を貼りこみ、螺鈿や玉石の装飾をふんだんに施した、うっとりするほど美しい《箏 銘 青海波(桃山~江戸時代)》は、いったいどんな音が出るのだろうと思ってしまいます。《琵琶 銘 松虫 御家名物》は、大河ドラマ「光る君」主人公まひろが琵琶を弾くシーンが思い出されました。婚礼の調度類は、どれもこれもため息ものです。《白綸子地鼓に藤・杜若文打掛》は14代慶勝の正室矩姫が着用の品です。白の光沢がある綸子地に、金糸や色糸の刺繡で鼓・藤・杜若が縫い取られています。鼓は紫と金で表し、二つの円を重ね、離して配することで、単調ではない動きのあるデザインを実現しています。富と権勢を象徴するような優雅な美しさです。袴を着けない式日などには、褄をつまみ上げ、長い裾をひいて歩行したそうなので、一層華やかだったろうなどと想像してしまいます。蜀江文繋地に葵紋散らした《純金葵紋蜀江文皿(重文)》《純金葵紋牡丹唐草文盃(重文)》は、ラストの「初音の調度」千代姫の嫁入り道具の一部だそうです。黄金の嫁入り道具は茶道具11点・香道具10点・調度品6点の合計27点が現存するそうです。当初はさらに多量な黄金の嫁入り道具が用意されたとみられるとのことでした。どれだけお金をつぎ込んだ??本体は木胎に金の薄板を貼り合わせた構造で、水滴や刀子・錐の柄は金の無垢である。水滴を蛍光エックス線で分析した結果、銀5%・金95%の二十三金であったそうです。豪華絢爛もさることながら、個人的に気に入ったのは《短冊色紙貼交帖「言葉の林」》、尾張家十二代・斉荘が交流のあった人々の短冊や色紙を貼りこんだ、いわゆる優れた筆跡のコレクション帖で、料紙の繊細な美しさに、文字配置のバランスの美しさに、それに「言葉の林」というなんかめちゃ素敵な名に感激でした。政治的には斉荘の人脈の広さがうかがえるものなのでしょうが。《新六歌仙画帖/詞書 真敬法親王・絵 狩野常信》(頁替えあり)は、『古今和歌集』の六歌仙にならい『新古今和歌集』時代に活躍した六人の歌仙の姿と和歌を記したもので、和歌は扇や几帳・絵巻などの形に切られた料紙中に、歌意をあらわした歌絵とともに記されています。普通に下絵の上に和歌を記したものとか、和歌が書かれたところに挿絵が添えられていたりはよく見ますが、こちらの手法はとても面白いですね。
そうして今展のラストを飾るのは、特別公開となる2つの国宝《源氏物語絵巻》(展示替えあり)と《初音の調度》(胡蝶の調度と展示替えあり)です。
今回徳川本《源氏物語絵巻》から特に4場面を選りすぐり、会期中に順次公開されるとのことです。こちらは、NHK大河ドラマ「光る君」に重なる、11世紀初頭に紫式部が著した『源氏物語』を絵画化した現存最古の作例なのだそうですね。以前に、五島本と徳川本を一堂に全公開、と言う時に観たことがあり、《平成復元模写》なるものも観ていますが、徳川本の2020年巻子装に戻した修復完了後、は初めてです。詞書の優美な仮名の流れや料紙の微妙な色の変化とやまと絵とが、互いに響き合う絵巻本来の姿がよみがえったことは、昨秋のトーハクの特別展で、絵巻は右から左へ動かしつつ読んで観る意味を知らされているだけに、やはりうれしい限りです。この日は《横笛》が展示ということでしたので、一応電子ブック(https://my.ebook5.net/tokugawa/genji/)を事前に確認して行きました。《初音の調度》は多分初めて観ると思います。三代将軍家光の長女千代姫は、わずか数え年三歳で尾張徳川家二代光友にお嫁入りしました。千代姫の婚礼調度は、調度の意匠が『源氏物語』の「初音」の帖に因んだ「初音の調度」が47件、同じく「胡蝶」の帖に因んだ「胡蝶の調度」が10件、さらに染織品・金工品を加えた総計70件が現存し、一括で国宝に指定されています。この日は《初音蒔絵旅眉作箱(初音の調度)》の展示でした。本当に素晴らしいです。語彙力が無くて感動を上手く表現できずに申し訳ありません。単眼鏡フル稼働です。いずれもケース越しとはいえ近距離で観ることができるため、細かい部分までじっくり味わえるのが魅力です。以前に観た時はどちらも、凄い混雑の中だったことを思い出します。空いてて本当に嬉しかったです。
猛暑の中、平日昼時ではありましたが、流石に尾張徳川家のお宝の魅力でしょうか、結構観覧者はいらしていました。近年刀剣ブームと言われていて、アニメやゲームなどもそんなブームを後押ししているらしいですね。普段は年配の観覧者がほとんどなのですが、夏休みに入っていることもあり、刀剣ファンの若い女性方が、多くいらしていました。屏風や蒔絵などよりもめちゃめちゃ真剣に尾張徳川家に伝えられた重宝、刀剣や武具を鑑賞されていました。関心ですね。