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あべのハルカス美術館開館10周年記念 円空-旅して、彫って、祈って-

あべのハルカス美術館開館10周年記念 円空-旅して、彫って、祈って-

あべのハルカス美術館|大阪府

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円空からのメッセージ

開催が発表されてから楽しみにしていた「円空展」である。
ゆっくり鑑賞したくて平日の午前中に訪れたが、意外にも混雑していた。失礼ながら来場者の年齢層は高く、どうやら老人会のツアーに遭遇したらしい。

本展は時系列に従い五章構成となっており、全国行脚した円空の生涯の約30年を辿ることができる。その日々で彫り続けた現存する神仏像約5000体の内約160体が集結している。
まず入口で最初に出会うのは「金剛力士(仁王)立像(吽形)」である。巨大な作品で見るものを圧倒する。
本編に入り、30代の初期の作品は我々が知っている円空の作風とは大きく印象が異なる。例えば「十一面観音菩薩立像(真教寺)」はかなり大きな作品で一本の木から作り上げたものであるが、表面はつるつるとし、滑らかなフォルムからは優美さを感じさせる。
しかし、40代になると作風は変化する。周知されている円空仏の登場である。「護法神像(栃尾観音堂)」は小さな胸像だが、その特徴を多く表している。怒髪衝天の形相で眼光鋭くこちらを見据えている。簡潔な作りだが、やはり技術力の高さが伺える。
作風の変化は何に起因しているのだろうか。より厳しさが増した修行の有り様を一刀一刀に荒々しく刻んでいったのか。あるいは木の形状を生かし、象徴的な神仏を表現するに留めることでより多くの作品を残そうとしたのか。いろいろな思いが浮かんでくる。
50代に入ってからの代表作「両面宿儺坐像(千光寺)」は伝説通り一つの胴体に顔を前後に二つ、手足を四本ずつ持つ異形の人物を表したものであるが、美術品としても卓越したデザイン力と完成度の高さに感動し、しばらく見入ってしまった。
そして、60代の円空最後の作品「十一面観音菩薩及び両脇侍立像(高賀神社)」で締めくくられている。三体共細く、すっと伸びたしなやかな体で高さがある作品である。どのお顔も慈愛に満ち、後光が差すかのような存在感である。

鑑賞を終え、世の中の平安を願い、人々の幸福を祈りながら何十年も全国各地を旅し、厳しい修行を重ね、神仏像を作り続けた円空の崇高な精神に心打たれた。当時の人々は円空の神仏像を前にし、日々の苦悩から解放され、心癒され、一条の光を見たのだろう。また、7歳の幼い日に突然洪水で母を亡くすという世の不条理に泣き、悲しんだ円空自身も神仏像を彫り続けることで魂が救済されていったのではないだろうか。
しかし、それは遠い昔の人々の姿ではなく、現代の我々でもある。約350年経った今も根源的な意味では社会の様相は変わらない。世界のあちこちで起こる戦争、毎年絶えない災害。また貧困と抑圧の中で我々は喘ぎながら生きている。人間のエゴ、愚かさが生む負の連鎖は決して終わらない。当方には宗教の意義についてはわからないが、円空の神仏像は後世に何を伝えようとしているのか、その重いメッセージをしっかりと受け止める力が我々にはあるのか考えさせられた。

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