黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史
福岡市博物館|福岡県
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近代までをカバーした黒田家の歴史が分かる質の高い展示
まず、黒田家「家宝」ということで、企画展や福岡市博物館企画の特別展ではおなじみの福岡藩の名品が一通りみられます。過去の展示で言えば「特別展 侍 ~もののふの美の系譜~」でも見た甲冑や兜、刀剣なども多く展示されていました。
これまであまり収蔵品を見る機会がなかった人が網羅的に黒田家の名品を見るにはうってつけの展示です。これらの品は展示の内容や時期によっては人が多くなかなかゆっくり見ることができませんが、今回の展示は比較的じっくりみられる展示ですので、これまで別々に見た収蔵品をまとめてみたい場合やゆっくり見られなかった展示品を再び鑑賞したい人にもおすすめです。
収蔵品や寄託品中心なのですが「移動する「家宝」」の章では出光美術館や東京国立博物館等の所蔵の家宝も見ることができます。中でも国宝の「太刀銘「安家」」などは非常に見事でした。
今回の展示は明治以降の黒田家当主からの視点での「家宝」なので、これらの家宝をいかに選別していかに残したかという明治維新以降の諸藩に共通する苦労を垣間見ることができるとともに、皇室から新たに賜り新たに家宝となった品なども加わっているので名品のやりとりにより人とのつながりを深め、名品がその証明ともなる文化が明治以降も続いてきたことが実感できます。
また、戦国時代や江戸時代中心の展示では省略されがちな明治以降の黒田家当主が中心に紹介されており、今まで知らなかったこともたくさん知ることができました。鳥類学者の黒田長禮氏のことは気になりながらもよく知らなかったので、原稿等面白かったです。近代の当主のことを知ることで明治維新以降に家宝の維持が出来ず名宝が散逸した藩も多いなかで黒田家が多くの品を福岡市博物館に伝え福岡の宝にできた理由も今回の展示で分かる気がしました。
欠点をあげるなら収蔵品中心なので「ここで見ておかねば福岡では二度とみられないかも?」という品は少ないです。地味といえば地味なので、話題性には少し欠けるかもしれません。
しかし丁寧な切り口で多くの家宝を展示しており、派手さはないながらも非常に質の高い展示だと思いました。