永遠の都ローマ展
福岡市美術館|福岡県
開催期間: ~
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ローマの美の遍歴を俯瞰する
注目作品を中心に、作品がつくられた時代背景と特徴を簡単に紹介します。
まず、古代から時空をつなぐ象徴的な立地の紹介です。カピトリーノの丘に建つカピトリーノ美術館はルネサンス期にミケランジェロが設計した幾何学的なデザインの広場で知られています。美術館の背後には、古代からローマの中心であったフォロ・ロマーノがあり、その一直線上にコロッセオが位置しています。その直線をさらに伸ばすと、コンスタンティヌス帝が建てた世界最古のキリスト教教会、サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ教会があります。世界最古級の美術館であることと共に、否が応でもローマの象徴的な意味を担ってしまうそんな場所です。
◇注目作品◇
✓ ローマ時代(帝政期)
≪コンスタンティヌス帝の巨像の頭部と左手(4世紀)≫
≪マティディアの肖像(120-121年)、アウグストゥスの肖像(1世紀初頭)≫
西暦115年頃にトラヤヌス帝の下でローマ最大領土を支配しました。公共の場に置かれた皇帝の彫像が帝国の永遠性を宣言しています。コンスタンティヌスの巨大なブロンズ像は帝国の力と偉大さを示すものでした。同時に帝政期はゲルマン民族の圧力とキリスト教の台頭という転換期にもあたり、領土は縮小し、476年のローマ帝国崩壊は中世への重要な転換点となりました。
帝政期のローマでは権力者の妻たちが注目され、美意識が豊かになりました。その前の共和政期には女性の社会的地位が低く、髪形も地味でしたが、この時代になると上流階級の女性たちは皇妃の髪形を模倣し、ウィッグやエクステンションを使って新たな髪型が流行しました。また、ローマの肖像彫刻は写実性が高く、男性だけでなく女性の胸像も多く展示され、年齢に応じた特徴を示す作品が多かったことから、人々の特徴や人生の様々な段階を意識した表現がされていたことが伺えます。
✓ 中世
≪ローマ教会の擬人像(13世紀)≫
古代末期から中世初期にかけてのヨーロッパでは、キリスト教美術が戒めと布教のバランスの中で発展しました。この時代、キリスト教圏では、3次元のボリュームを持つ彫刻が異教の神殿にある神々の像と似てしまうことから、偶像崇拝を避けるために、これらの彫造を2次元のモザイクへと置き換える革新的な変化が見られました。特に7世紀以降、モザイク画において金字背景を用いることで、空間の奥行を抽象化し、奥行きがなくなり、平面的で切り絵のような2次元の人物表現が一般的になりました。背景を金字にすることで色彩の対比が鮮やかになり、より抽象的な神の世界を現実世界から隔てて表現し、キリスト教徒にとっての現世は仮の姿として捉えられ、信仰心と内面世界の重要性が強調されました。
✓ バロック・新古典主義時代
≪古代アッピア街道とアルデアティーナ街道の交差点(1756年頃)≫
作者のピラネージは18世紀イタリアで、崩壊しつつあるバロック的世界観と、古代遺跡の発掘に触発されて台頭していた新古典主義やロマン主義との結節点に位置している版画家です。彼はさまざまな遺跡や廃墟を独特の遠近法で描きました。よく見ると、古代の牝狼像も描かれています。作品では遠近法が歪められ、廃墟のようなローマを背景に、細密に描き出された建築と彫像が折り重なっています。まるで熱帯の蒸し返すような熱気をこの都市から感じます。無国籍的な様相を呈するこのエッチングにも都市ローマが豊かな想像の淵源となっています。
◇= イタリア・ローマつながりで映画の紹介 =◇
カピトリーノ美術館の前に広がる広場が登場する、ソ連のアンドレイ・タルコフスキー監督が亡命先のイタリアで制作した映画『ノスタルジア』が現在各地で上映中です。当分の期間は主に各地のミニ・シアター系の映画館で鑑賞ができると思います。上映館や上映期間は下記のURLをお確かめください。1983年公開のフィルムをデジタル4Kにしたことで、これまで知覚できなかった光が薄暗い画面から立ち現れる圧倒的な映画体験です。ここでもやはりローマが芸術家に霊感を与えています。
『ノスタルジア』4K修復版 上映URL:
https://www.zaziefilms.com/nostalghia4k
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- BY curio crypt