特別展 大蒔絵展―漆と金の千年物語
徳川美術館|愛知県
開催期間: ~
- VIEW565
- THANKS1
中世から近代まで蒔絵でめぐる
大蒔絵展の名の如く、日本で発展した漆工芸技術の歴史を概観できる展覧会であった。展覧会の一番の見どころは、徳川美術館の所蔵する平安絵巻『源氏物語絵巻』と日本一の嫁入り道具『初音の調度』である。しかし、全体的にも中世の名品から、江戸時代お抱え蒔絵師による個性あふれる作品、近代の洗練されたデザインまで、大いに楽しむことが出来た。
展示は平安時代の作品から始まるが、室町時代くらいまでは手箱が中心となる。手箱、経箱、硯箱といった日常生活に用いられたような作品が並んでいる。装飾も比較的控えめなものが多い。そこから安土桃山時代頃から作品の幅が多岐にわたるようになり、装飾も一気に派手になっていく。この展覧会では新たな権力者や西洋と銘打ち、このような変化は南蛮貿易や戦国の機運によるものと紹介されている。
そして江戸時代になると、一気に作者名が明記された作品が増えてくる。幸阿弥長重、本阿弥光悦、尾形光琳、また各藩のお抱え蒔絵師による作品群である。このため作品も個性的なものが多い。用途も箱ものの他、印籠や櫛といった身に着けるようなものにまで作品の裾野が広がってくる。これは江戸時代も中期以降になると、作品の発注主が大名だけでなく、武士や町人クラスにまで広がっているように感じられた。蒔絵が身近なファッションに取り入れられた様を観て頂きたい。
一方で、蒔絵も近代から現代になると、また箱ものの作品が多くなっている。この時代になると蒔絵が伝統産業として位置づけられたものと思われる。近代デザインの取り入れられた蒔絵も楽しめる。
- THANKS!をクリックしたユーザー
- morinousagisanさん