佐藤健寿展 奇界/世界
山口県立美術館|山口県
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新たな奇界へ
同じ企画展を別の美術館で見るという体験を初めてした。1年前に西宮市大谷記念美術館で見た、佐藤健寿「奇界/世界」が地元に巡回して来たのだ。
この山口展、いつ決まったのか知らないが、少なくとも最初の開催である西宮展のときは開催情報はなかった。そのとき買った図録にも西宮、高知、館林の三都市を巡回するとの記載はあるが山口はない。
でもまあ、山口に来てくれたこと、そして引っ張って来た当館のエース、Y学芸員さんには感謝です。
さて、山口展。佐藤さんの最新奇界探訪も出てたりして1年前からのプラスアルファ展となっている。来てよかったとの思いは大だ。
前半の「奇界」では、人間の奇異な発想が生んだ建造物や居住空間、行動や風習に驚愕する。
その発想が愚かさ、異常さを伴い、為政者や権力者に及ぶと狂気へとつながり、やがて破滅へ向かうという現実。
それがたった1枚の写真でも十分だ。想像を駆使して佐藤さんの奇界行に同行しようではないか。
会場随所には吹田の国立民族学博物館からの貴重な現物資料も出展。
これがホンモノかと、写真と併せてじっくり鑑賞しましょう。
後半の「世界」は、山口展独自の展示法がいい。部屋を暗くして無キャプションの写真をバックライトで浮かび上がらせている。
ここでは被写体の美しさと共に、この地球、この21世紀に厳然と存在するミステリアスでアメイジングな異邦を目に焼き付けることができる。
そして映像。実は私が山口展に来た最大の理由がこれを見るためだった。
西宮展では閉場間際の時間帯に行ったので、半分ぐらいしか見れなかったから。
佐藤さんの奇界は、写真もさることながら映像で見るとなお一層迫力を増す。
30分のエンドレス映像は、その昔「ウルトラQ」での石坂浩二のナレーションを思い出す。
「これから30分、あなたの目はあなたの体を離れ、この不思議な時間の中に入っていくのです」
会場ラストは「再生」というテーマ展示で、佐藤さんの昨年夏以降の最新取材写真が紹介されている。
先ごろ「クレイジージャーニー」でやった、北極圏スバールバル諸島の他、未公開写真多数あり。
本稿は2023年4月17日UPだが、この日まさに放送される上記番組でのバヌアツ諸島が面白い。
ネタバレになるので書かないが、他にタイ奥地の先住民などの世界初取材写真もあり。
21st Century Schizoid Journeyへ、いざ。