鑑賞レポート一覧

パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックから ドローネー、シャガールへ

パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックから ドローネー、シャガールへ

京都市京セラ美術館|京都府

開催期間:

  • VIEW293
  • THANKS1

20世紀の大発明

キュビズム、キュビスム、キュービズム、キュービスム、最近は発音重視派の勢力拡大により新旧入り乱れた呼び方が飛び交ってますが、昭和人はキュービズムだし、ポンピドーです(笑)
ポンピドゥーなんて、モレシャンさんが言うのなら素敵だけど、私らオッサンは口に出すのもこっぱずかしいです。

当展、昨秋の東京開催時にちょうど上京しており、実は十分行けたのですが、どうも気乗りせずに科博の和食展に行ってしまいました。
同じタイミングで女房は西洋美の当展を鑑賞したので感想聞いたら、「そうねえ・・・まあ、キュビズムだね。」
んーーーーー、なんとも奥深いというか、含蓄のあるというか、禅問答の様なお答え。
って、わけわからんやないかい(笑)。でもこれがキュビズムってことかな。(キュービズムより入力数が1回少ないのでこっちにしますw)

桜は散ってツツジが咲き始めた4月中旬の平日、まずは京近で鉄斎展見てからお向かいの市美へ。
市美では同時開催で村上隆展をやってるので、京近よりはだいぶ混んでました。
キュビズム展は本館1階の北回廊と南回廊をフルに使っての展示です。
会場に入る前は多かった人も、一気に少なくなりました。村上展に客取られたのかも。

キュビズムを予習すると必ず出てくるセザンヌの静物画。1枚の絵の中に、視点が異なるリンゴが描いてあって、これがピカソの変顔の基となったウンヌン。
でもこれまで、その多視点論を念頭にセザンヌ画を見ても、ちっとも納得いかなかった。
リンゴを正面から上から横から見た絵を同じ一つの画面上に描いてあるのが画期的で、それにピカソが触発されリンゴを女性に変えて描いたのがキュビズムの始まりだっちゅうやつ。
リンゴなんて、向きを変えて置けばなんぼでもそういう絵が描けるじゃん。セザンヌの静物画はどこにも変なとこないとずっと思ってた。

が、しかし、今回のキュビズム展の冒頭でそのセザンヌ画が出てて、解説読んだら目からウロコの大納得。
種明かしはリンゴじゃなくてテーブルだったのだ!
木製テーブルの四角い天板の左半分が、あたかもコンニャクのようにひねりが加えられて手前に傾き、リンゴの向きも変わっていたのです。
そしてそのひねりが加わったあたりは白い布が掛けられて、うまい具合に隠されているのでした。
これは解説と合わせて絵を見ないと素人には絶対にわかりません。
別のリンゴ絵をネットで見たら、テーブルがコンニャク型じゃなくて、ブーメラン状に角度がついてるのもありました。こちらも曲げ応力がかかったとこには白布がかけられて。

もう今回はこれがわかっただけでも収穫ありありの展覧会でした。
あとは、ピカソありブラックあり、いろんなキュビズムフォロワーありで、たっぷりと楽しめました。
以上です。

って、これじゃああんまりなので、もうちょっと書きます(笑)
まず、キュビズムの語源となったキューブ=立方体ですが、これもセザンヌの風景画に出てくる家が箱形で、それを見たブラックがパクって似たようなボックス家屋を描いたのが原点だそうです。
ここで私の大発見ですが、この1908年ブラック作《レスタックの高架橋》に描かれてる切妻家屋。
これって、その400年以上も前の室町時代に雪舟が描いた《山水長巻》にも出てくるんですな。
京博で雪舟展も今やってますんで、是非注目してください。

キュビズム展に戻ります。
今回の展覧会ではキュービックな立体で埋め尽くされた人や物や風景という作品は意外に少なくて、むしろ二次元の四角、三角、丸といった形で構成されてる絵のほうが多いと思いました。
キュビズムというより、スクエアリズム、トライアングリズム、サークリズムとでも言いましょうか。
ピカソしかり、ブラックしかり。そのフォロワーたちも、四角や三角のつぎはぎだらけの人物画を描き、時には円弧や扇型なんかでバリエーションもたせて、色の変化でオリジナリティ出すみたいな。
キュビズム絵画はそんな作風に満ち溢れてる気がしました。
じゃあ、本来の「キューブ」はいなくなったかというとそんなことはなく、彫刻で本領発揮しています。
アンリ・ローランスの作品は、まさに三次元のこれぞキュビズムって彫刻です。
絵のキューブも彫刻のキューブも、サイコロキャラメルのようなガッツリサイズあり、キュービックキャンディのようなプチサイズありで千差万別。
キュビズムの世界は無限です。

19世紀末のセザンヌ作品から閃いたピカソとブラックが、20世紀初頭に発明したキュビズム。
美術界に嵐を呼び、時代を席巻し、あらゆる作家に影響を及ぼした一大ムーブメントを時系列に沿って学びながら吸収できる展覧会です。
ポンピドーセンターからこれだけの作品がやってくる機会はめったにないでしょうから、行ける方は行っておいたほうが良いと思います。

THANKS!をクリックしたユーザー
にゃんちゅうさん

鑑賞レポート一覧に戻る

こちらの機能は、会員登録(無料)後にご利用いただけます。

会員登録はこちらから
SIGN UP
ログインはこちらから
SIGN IN

※あなたの美術館鑑賞をアートアジェンダがサポートいたします。
詳しくはこちら

CLOSE

こちらの機能は、会員登録(無料)後にご利用いただけます。

会員登録はこちらから
SIGN UP
ログインはこちらから
SIGN IN

ログインせずに「いいね(THANKS!)」する場合は こちら

CLOSE


がマイページにクリップされました

CLOSE マイページクリップ一覧を見る


がお気に入りに登録されました

CLOSE マイページお気に入り一覧を見る


を訪問済みに移動しました

CLOSE マイページ訪問済みイベントを見る

CLOSE

name

参考になりました!をクリックしたユーザー 一覧
CLOSE