開館60周年記念 小林正和とその時代―ファイバーアート、その向こうへ
京都国立近代美術館|京都府
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繊維と自然の「あわい」-人工物が紡ぐ自然の創出-
小林正和のファイバーアートは、糸の重力による垂れ下がりと、弓のように張られた緊張を対比させて、自然の風景や音を象徴的に表現します。この手法により、静寂と動き、繊細さと力強さが共存する独特な感覚を創出し、視覚的な静けさと動き、繊細さと強さの感覚を観る者に与えます。織られていない部分と織られている部分の対比を通じて、糸のしなやかさや繊細なグラデーション、燦めきを美しく表現し、作品に優美さと迫力をもたらしています。
「織物だけど織らない」というコンセプトのもと、小林は糸を異なる長さで垂らすことにより豊かな質感を作り出し、半分壁から浮かび上がる立体的な造形にも挑戦しました。技術と創造性を組み合わせ、糸自体の原初的な美しさを持つ独自の芸術形式が生まれました。このプロセスは、糸が垂れる様子や長さに至るまで精緻に計算された様子がスケッチブックを通して垣間見えます。
糸は本質的に工業製品ですが、小林正和の展示は、彼が織物の伝統的な概念をどのように超え、自然との繊細なバランスを模索してきたかを示します。彼の作品は、視覚的にも心理的にも我々に深い影響を与える自然と繊維の間の関係="あわい"を探るものです。
展示される約80点の作品には、《Blow in the Wind》シリーズや大型インスタレーション、未公開のスケッチブックやドローイング、デザイン作品などが含まれ、小林のファイバーアートにおける多様性と挑戦の軌跡が垣間見えます。展示は他にも、小林と同時代を生きた17人の作家たちの作品も紹介されており、ファイバーアートがどのように平面から立体へ、そして周囲の空間へと進化してきたかも紹介されています。
◇= 同時代の映画の紹介 =◇
『夜の河』(1956年)
1950年代の中京と下京エリアを舞台にした映画で、この戦後復興期に伝統的な世界に生きる人々の姿を通して、戦後の社会の変化と人間ドラマを描いています。
地上を走る京阪電車や高さが揃った長屋が延々と連なる、今となっては失われた京の街を舞台に、当時の繊維産業に従事する人の生活様式や社会構造が垣間見えます。
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- morinousagisanさん
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- BY curio crypt