
小牧源太郎 生きとし生けるもの
市立伊丹ミュージアム|兵庫県
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シュールにもいろいろある
未知の作家の展覧会行って、大当たりだった嬉しさと言ったらないでしょう。
2022年度もいくつかそんな個展に巡り合いました。
そして年度末を締めくくる初打席ホームランが、小牧源太郎です。
予習では日本のシュールレアリズムの草分けの一人だとか。
そこからすでに興味津々なのですが、展覧会紹介サイトなんかで作品画像見たら、これがなかなか良いではありませんか。
2月末の関西遠征時を利用して、さっそく伊丹市立ミュージアムへと向かいました。
受付では当展並びに、同時開催の芭蕉展のダブルチケット買いました。会場は受付の隣が芭蕉展入口で、それを先に見ましたが、実に良かった。
その感想は最後にちょこっと書きます。
小牧展は2階と地下。当館は会場が上下左右と移動が多いのがちとめんどいですが慣れればなんてことありません。
小牧源太郎(1906-89)は、1930年代から創作活動を始めており、一貫して「シュール」な絵を描き続けた作家です。
ただ、そのモチーフというか画風の変化はあって、最終的には土俗信仰、民俗学、宗教、宇宙といったテーマの絵に収束、ライフワーク化しています。
シュールな絵というと、ダリやマグリットなんかの不条理絵画がまず思い浮かびます。
小牧も初期にはそんな絵も見られますが、だんだんと上記したような世界観からイメージをふくらませた、ある種のシャーマニズム的な絵が特徴となってきます。
そして、その絵は原色系でカラフルな抽象画であり、先入観なしに見ても何の絵か回答不能なのですが、タイトルや解説見ながらだと、なるほどなあと頷いてしまいます。
私はパっと見、60年代に蔓延したサイケデリックアートをまず思いました。
小牧の絵はシュールと言うより、POPな曼荼羅とでもいいましょうか、難解さよりも愉快感や昂揚感のほうが勝ってくる不思議なサイケ画です。
サイケはドラッグと不可分な部分もありますが、小牧の絵はそんなもの借りずとも、思索に耽って生み出される異次元界のサイケシュールだと思うのです。
稲荷信仰、道祖神、オシラ様、陀羅尼、サトリ妖怪、などといった、何をどう描くか凡人の想像がつかないモチーフをキャンバスに見事に展開し、見る者の目を釘付けにします。
伊丹ミュージアムは小牧作品や資料を多数所有しており、今回の回顧展につながっています。その展示品を見ていると、完成作品の部分的なスケッチや下書きが多いのに気づきます。油彩の大作は、一つ一つの細かいディテールの集合体なのです。
晩年の作品には、シャーロック・ホームズの「踊る人形」に出て来る絵文字みたいなのが、頻繁に出てきます。
小牧の絵はシャーマニズム的だと書きましたが、これを見てるとまさに呪術や祈祷の祭壇に飾ってもいいような気にもなります。
小牧源太郎展、このレビューUP時には終了していますが、何かの機会に彼の絵をご覧になれば好きになるかた増えると思います。
さて、冒頭で書いた「芭蕉展」、小牧展に先立って拝見したのですが、驚いたのは「古池や蛙飛び込む水の音」の芭蕉直筆の短冊があったこと。これが見れただけでも収穫でした。
当館は、伊丹の酒蔵岡田家22代当主岡田利兵衛の俳諧資料コレクション「柿衛文庫」を所蔵しており、この芭蕉展もそこからの展示です。
一昨年に永青文庫でもやったそうで、見た方は私同様、カエルの飛び込む音に驚かれたのでは(笑)
市立伊丹ミュージアムには、隣接して国指定の重文岡田家旧宅がありますので、そちらの見学もお忘れなく。
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