
モネ 連作の情景
大阪中之島美術館|大阪府
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至福の時間
東京からの巡回を知り、前売券を手に待ち焦がれていた「モネ展」である。連日の大盛況ぶりを聞いていたので、平日の開館直後に訪れたが、既に長蛇の列で面食らってしまった。ちょうど春休みのせいか、大学生風の若者や年配の方も多かったが、8割は女性客である。
人々は何故ここまでもモネの作品に惹きつけられるのだろうか。当方も国内外の美術館で多数モネの作品を観てきたが、今回再認識したのは圧倒的な美しさである。当たり前のことしか書けないが、色彩、光の描き方、構図等、その見事さに心が震え、鑑賞を進めるにつれて段々と自分の気持ちが高揚していくのがわかる。
本展はほぼ時系列に従い、五章構成になり約70点が展示されており、全てが素晴らしかったが、その中でも印象に残った作品を何点か挙げたいと思う。
「海辺の船」
絵の上部には陽光降り注ぐ青空が広がり、散らばった白い雲がより明るさを強調している。目を下にやると岸に乗り上げた黒い船体。光と影のコントラストが絶妙で、お互いを引き立て合い、絵を完成させている。感動でしばらく立ち去れなかった。
「ポール=ドモワの洞窟」
まず海の色の鮮やかさに目が釘付けになった。絵葉書やネット上の画像でも見ることはできるが、実物のその鮮明さは形容しがたい。青や緑の美しいグラデーションを成した海面に陽が当たり、キラキラ光り、洞窟が作る影がより一層まぶしさを強調している。モネが「光の画家」といわれる由来がまざまざと感じられる作品である。
「マンヌポルト(エトルタ)」
リーフレットにもあった作品で連作の1つである。大きな門という意味の岩と海が描かれており、光の当たり具合で見せる複雑な表情を多彩な色を重ね、細かな筆致で表情している。観る人によりいろいろな感情を掻き立てる不思議な魅力を持つ作品だと思った。
「国会議事堂、バラ色のシンフォニー」
こちらも連作の1つだが、ほのかに光が残る夕暮れ時、一面霧の立ち込めた風景の中、逆光で浮かび上がった国会議事堂。テムズ川にその影が映る。ピンクやオレンジ、青と色の入り混じった霧が全てを包み込んでいるようで幻想的にロンドンならではの空気を醸し出している。
最後のコーナーに展示されているのはモネ晩年の作品である。その何点かはそれまでのものとは印象が異なる。対象物が抽象化され、ラフな描き方に見える。そのせいか色彩が前面に出ているように感じられる。周知のように白内障に悩まされた頃の作品なのだろう。近しい人達を失い、衰えゆく視力の中、渾身の力を込めて描き続けた、巨匠の生涯を語る上では欠かせない大切な作品達である。若い頃の繊細な色調は消え、幾重にも塗り込められられた赤や青の色調はどこまでも深く、モネの生き様のように力強さが伝わってきて、不覚にも泣きそうになった。
あまりの人の多さにゆっくりと鑑賞することはできなかったが、とても濃密な、幸福感に満ちた時間を過ごすことができた1日だった。
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- karachanさん
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- BY springwell21