デザインに恋したアート♡アートに嫉妬したデザイン
大阪中之島美術館|大阪府
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美術館からの挑戦状
美術展の目的とは何か。
Wikiには「不特定多数の鑑賞者を対象としつつ啓蒙を目的としたもの」と書かれています。
例えば、その画家の生涯。あるいはある流派の盛衰。そこには「解説」があり私たちは解説を読み、その画家、その絵について学ぶことができる。
「でも、これってある意味、その美術館の見解じゃないですか」そうおっしゃったのは本企画担当学芸員さん。今回はこの学芸員さんの解説付きツアーにも参加させていただきました。
もともと中之島美術館の収集方針が「大阪と世界の近現代美術および近現代デザイン」であり、所蔵作品は美術とデザインに区分されます。
ちなみに家具は分類上デザインであって美術ではない。
しかしながら、(今回は展示されていないけど)岡本太郎の『座ることを拒む椅子』もデザインなのか?世界一美しいといわれるウェグナーのザ・チェアはアートと呼べないのか。
本企画展は、美術館の使命の一つである「解説と教育」を最低限にとどめ、単純に「この作品はアートかデザインか?」を来訪者に問う、答えなき問いを問いかける美術館からの挑戦状です。
そもそも、アートとデザインをどのように区別するのか。境界線はあるのか?
これについては幾度となく議論されている内容。
ある人曰く、「デザインは見た目の美しさ、アートは自己表現」
であれば、今回の目玉の一つである倉俣史朗さんの『Miss Blanche (ミス・ブランチ)』という椅子。透明のアクリルで作られた椅子ですが、アクリルの中は薔薇の造花が閉じ込められています。
ミス・ブランチは戯曲『欲望という名の電車』の主人公の名前。そしてこの作品はブランチの虚がキーになってくる。だから彼女の名のついたこの椅子には「造花」がなければならない。
というのが倉俣さんの「自己表現」。じゃぁこれは「アート」。
でもその意味を知らなければ「デザイン」?
とまぁ、両者の境界線なんぞは実にあいまいなものとなります。
しかるに、デザインとアートこそが見る人の主観によるもの。
理知的にあるいは直感的に「アート」と「デザイン」について鑑賞者は考えざるを得ない
この問いかけは、心の中で強制的に「対話型美術鑑賞」を始めさせる。
また、それを作品リストや会場内に置かれたタブレットで投票させることで、あとで他の人との違いや同意について確認できるというおまけもついています。
「啓蒙を捨てる」という大胆な発想により新しい鑑賞方法を「啓蒙する」なんとも斬新な企画展でありました。
ところで、本展は考えるヒントとしていくつかの「発表年代」に分けていることと、もう一つあること点をコンセプトにしているとのこと。
そのコンセプトはご自身の目で観て考えてほしいと思います(笑)
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- morinousagisanさん