鑑賞レポート一覧

唐絵(からえ)の系譜 将軍家の襖絵/雪舟と狩野派

唐絵(からえ)の系譜 将軍家の襖絵/雪舟と狩野派

山口県立美術館|山口県

開催期間:

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ハーフ&ハーフの嵐 【追記】第一部は根津美術館に巡回

二部構成が何か変だなあと思ってたら、第一部はこの後11月3日から根津美術館に巡回することがわかった。
根津美のHPの次回展を見たら同じタイトルで紹介されていた。
根津美も会期は1か月で前後期がある模様。出品リストは今のところ不明だがたぶん山口県美と同様になると思う。
重文の2点、京博からの《四季花鳥図屏風》は前期、ウッドワンからの《四季山水図屏風》は後期だそう。
他の作品も前期後期があるかもしれないので、ご留意を。

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山口県立美術館の十八番が雪舟だ。
2022年秋は「唐絵の系譜 将軍家と襖絵/雪舟と狩野派」と題しての特別展を持ってきた。
実はこれ、本来なら雪舟生誕600年の2020年に行われる予定だったが中止となった経緯がある。
しかし、コロナ初年で大混乱の年であったにせよ、そもそもの会期は緊急事態発令もなく、感染者ピークも底の時期だったので、やろうと思えばやれたのだ。
事実、他館では感染防止対策をきっちり行って企画展を続々と再開していたし、山口県美も、ハマスホイ展や奇想の絵師展などをやった実績もある。
が、この展覧会は中止となって非常にガッカリしたわけだ。

そして2022年に、タイトルを変え、中身もアレンジしてようやくの開催だ。
まずはめでたしと言いたいとこだが、行ってみての不満がまたまた噴出した。

タイトル見れば二部構成となっている。総合タイトルが「唐絵の系譜」で、一部が「将軍家の襖絵」、二部が「雪舟と狩野派」。
一見、一部が前期で二部が後期のように受け取れなくもないが、そうではなく、会場前半が一部、後半が二部ということだ。
事実、展覧会特設WEBサイトに前期後期の表示は一切ない。
ところが、当展はなんと会期1か月の前後半で展示替えがあるのだ。
それはどこに記されているかというと、県美HPのお知らせ欄に小さく出ているだけ。
アクセスしたら展示リストが見れて、そこで初めて、前期後期で展示替えや巻替えがあることがわかる。
チラシも見れるが、デカデカと書かれた9月16日から10月16日の会期に前後期のワードはどこにもない。
よくよく見れば、他館から貸し出された作品写真の脇に小さく限定展示期間があって、「おや?」と気づくわけだ。

これはいかんでしょ。展覧会広報のイロハのイができてない。看板に偽りありとはこのことだ。

私はそれを全く知らずに9月のお彼岸中日に行った。
作品はどれも名品揃い。前半では雪舟の師である周文とそのフォロワーたちにSPOTを当てて室町期の足利家御用絵画が紹介されている。
根津美から来た国宝の《鶉図》を筆頭に、東博、京博、九博などの重文が並ぶ。
しかし、屏風がほとんどでタイトルにある「襖絵」は一点もない。
よくよく解説を読めば、「当時の足利将軍家を飾った襖絵は現存せず、当展では代わりに屏風絵でその襖絵を想像してみる」とある。
出展された屏風に不満はないが、タイトルが襖絵なのに襖絵がないってどういうこと? 
肝心の周文の作品は「伝」ではあるが、ウッドワン美術館から屏風が来ていた。

第一部の展示は全18点。うち12点が屏風で、さらにそのうち4点が6曲1双の右隻か左隻を前期後期で展示替えである。
ここでまたフラストレーション。6曲1双ぐらいは左右を通期で展示できなかったのか。1美術館から1双を1か月間借りるだけなんだから。
ピザがハーフ&ハーフならお得感あるが、屏風を半々で見せられてもうれしくはないね。

第二部「雪舟と狩野派」。
冒頭でいきなり国宝《四季山水長巻》が登場だ。
当展タイトルは「山水長巻と○○」にしてもよいぐらいの目玉中の目玉だが、ウエブサイトでもチラシでも、これが主役だ感はない。
防府市の毛利美術館では毎年晩秋にお披露目される名品で、今年も10月29日から12月5日まで全巻公開される。
それへの忖度か、毛利側からの貸し出し条件かは知らないが、当展では前後期で巻替えがある。これもまたハーフ&ハーフ。

それでもやはりこの巻物水墨画は素晴らしい。何度見ても、そのたびに雪舟の画力に感服する。
当展では長大なパネル展示も併設されわかりやすい解説が付き、常設展示室では映像による山水長巻がゆったりと流れるのも圧巻だ。

長巻があれば小巻もある。京博からやって来た重文である。
幅が長巻の半分、長さは長巻15mに対して小巻11mと小ぶりでタッチもやや穏和。
で、これもハーフ&ハーフで巻替え。

雪舟インスパイアの狩野派絵画は、栄信、探幽、元信、邦信、芳崖らの作品が並ぶ。
これらの絵画は通期でフル出場。安心して鑑賞願いたい。
前後期で分かれたのは長巻と小巻の巻替えの他には、板橋区美の《富士山図屏風》と静岡県美の《富士三保松原図屏風》のみ。

全体的なラインナップや構成は、さすが山口県美だとの思いはある。雪舟を出すからにはメンツにかけてヘタは打てないからね。
ただ、会期の短さとハーフ&ハーフの多さは、どうした県美と言いたい。2年前のリベンジに功を焦ったか。ちと残念。
私は県美のコアなファンだから、あえて厳しく書きました。ご勘弁を。

さて、当展と同時開催で常設展もやっている。
山口県美のオハコが雪舟なら、伝家の宝刀は香月泰男だ。
ここんとこ常設室ではご無沙汰だったが、久しぶりに油絵の優品を出して来た。
昨年から今年にかけて東日本を巡回した香月展が好評だったので覚醒したか。
これも今さらだが、山口県立美術館にわざわざやって来る県外のかたがたは、みんな香月が見たいんです。
そこがちゃんとわかってれば、常設展示室は年間通じて開室すべきだし、そこに香月作品は必ず掲げるべきなんです。
キラーコンテンツの出し惜しみほど見苦しいものはありません。

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