
【特別展】水のかたち ―《源平合戦図》から千住博の「滝」まで―
山種美術館|東京都
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「源氏と平家の “水をめぐる” 特集」もまた素晴らしいこと。
毎年、「涼を求めて山種さんへ!」という気持ちで楽しみにしている「水シリーズ」。今年は、雨、滝、川、海に加えて雪も!この季節に観る雪はまた格別で、氷室から出された氷をよばれた気持ちになった。
奥村土牛《鳴門》は、「坂本繁二郎色と大きな渦」の魅力的なこと。そして、毎年見ても滝の音に心惹かれるセザンヌ調の《那智》。黒田清輝の《湘南の海水浴》は、目を疑うほどまともな作品(←失礼)。この方は、小作品は美しく描くタイプなのだろうか?などと、密かに思いながら見ていたら、隣に加山又造《波濤》。構図も表現力も抜群で存在感が強く、大胆なのに繊細…という表現が相応しい作品ではないかとつくづく感じた。そして、やっぱり大好きな山本丘人。《真昼の火山》では、金箔が輝く雪景色の素晴らしいこと。毎年同じタイトルの展覧会でも、山種さまだから開催が可能なのだろう…などと思いながら、前半を終了した。
なお今回は、小林古径《河風》の撮影が可能。河に足を入れて涼をとる女学生。透明度の高い河の水の美しいこと。そして、薄物の黒い着物にモダンな帯、桔梗の団扇は、復刻販売希望の「河風スタイル」であった。
一方、「源氏と平家の “水をめぐる” 特集」もまた素晴らしかった。
前田青邨《大物浦》では、船を襲う波を表す銀箔がキラキラする。船体の傾きが平家の傾き始めた運命にも見え、その悲しさは船上人の表情にも現れているようにも感じた。
小堀鞆音 《那須宗隆射扇図》は、「安定した完成度」という表現が相応しいのかわからないが、全歴史上の人物を描いて欲しかった。小堀鞆音が描く全歴史上の人物像を見たかった。
《源平合戦図》は、安徳天皇、一ノ谷の鵯越、敦盛の最後、捕らえられた重衡、屋島の弓流し、扇の的、壇ノ浦の八艘飛び…など、臨場感に溢れんばかりの名場面が描かれたものであり、それが水軍による決戦であったことを実感した。
今年は特に大河ドラマで注目を集めている「源氏と平家」。この展覧会は見逃してはならない。