ミネアポリス美術館 日本絵画の名品展
山口県立美術館|山口県
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蕭白ファーストテイクの衝撃
ミネアポリス美術館日本絵画の名品展がサントリー美、福島県美、ミホミュージアムと巡回して、最後に山口県美に回ってきた。
始まって最初の土曜日、開館とほぼ同時に入場だ。
とにかく、コロナ禍での展覧会は、やってるときに一刻も早く行っとかないとね。
いつ中断するかわからないから。
私みたいな人、多いかと思ったがさほどでもなく館内ガラガラ。ゆっくりじっくり鑑賞できた。
展示作品は図録掲載92点中の86点。多くもなく少なくもなく、ちょうどいい。
ただ、テーマが「日本絵画の名品」であるから、総花的なラインナップなのは仕方ないか。
江戸時代の絵がほとんどで、マニアックな作者や作品も少ないので気楽に回れた。
とはいえ、初めて聞く作者・作品で面白いものもある。
住吉如慶「きりぎりす絵巻」。
昆虫版の鳥獣戯画だ。巻物なので限られた場面のみの公開だったが、もうちょい引き伸ばしてほしかった。
浮世絵師では三畠上龍。
肉筆画の「舞妓覗き見図」は対幅の掛け軸で、舞妓の素足を目玉ひんむいて見つめる童子がなんとも漫画チックでいい。
浮世絵は、超有名絵師の作品が並ぶ。誰もが知ってる写楽のえび蔵や、北斎の赤富士、歌麿美人画などが目の前数cmの距離で鑑賞可能なのが嬉しいね。
そして、おまちかね「奇想の系譜」の作者たち。
今回は山雪2点、若冲3点、蕭白1点が来てた。
中でも蕭白「群鶴図屏風」はすごい。畳に敷いた紙に一気呵成に描き上げた水墨画。
筆遣いが手に取るように見て取れ、一点の迷いもなく最初から最後まで全力疾走して完成させた大作だ。
昨秋、名古屋で見た蕭白展でもこれほどの一発勝負画はあったかどうか。
最近は動画で歌の一発勝負「ファーストテイク」が流行ってるそうだが、墨による日本画のファーストテイクは昔から珍しくはない。
この蕭白画は、その最高峰ではなかろうか。絵の前でしばらく金縛りにあって動けなかった。
当展は、この一作品のためにあるように思えてきた。
油絵とは対極にある、やり直し不可能な一発芸。この蕭白一点によって、当展の価値は格段にはね上がったと思う。
絵の具の下から天使が出てきて大騒ぎになった西洋画一点のためだけにあるような展覧会よりは、断然こっちを推します。
昨春の東京展はコロナの影響で会期の半分ぐらいは中断してた。
さらに浮世絵の大半は前期・後期の入れ替えがあり、前期展示はわずか12日間だったが、山口展は通しで全作品が展示されてる。
見逃した方は、是非おいでませ山口へ。