「みみをすますように 酒井駒子」展
兵庫県立美術館 ギャラリー棟3階 ギャラリー|兵庫県
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静謐 念願の酒井駒子展
兵庫出身の絵本作家、酒井駒子さんの絵本原画展「みみをすます」が、やっと兵庫にお見えした!ああ、この日をどんなに待ち侘びたであろうか。
絵本で、書籍で、酒井駒子さんの魅力は充分伝えてもらった。私が酒井駒子さんの作品の魅力にハマったのも「絵本」だったから。それでも、「原画」の魅力には太刀打ちできない。
更に今回、すばらしいと感動したのは、その展示方法にある。
京都在住の外国人建築家の手によるものらしいが、酒井駒子さんの作品の魅力を余すところなく伝えている。というか、酒井駒子さんの魅力を展示形態によって更に更に数段バージョンアップさせているのだ。美術館ならではの見事な手法である。
「『よるくま』の部屋」とよぶべきスペース。闇の黒と夜空の黄をこう再現してくれたか! 黒い椅子に座り、それこそ顔を近づける様に「よるくま」のかわいらしさとファンタジーな空間を堪能した。
「まばたき」の三つ編みの少女が老婆に変わっても、かわいらしさは少しも変わらない。長い時の流れを一瞬で表現する。
反対に猫が獲物を狙う「一瞬の時の流れ」を短い言葉と3枚の絵で見事に表現する。大小3つの白木の台を観察者自らが回転しながら確かめる。時の流れを原画と短いオノマトペで「展示」しているのだ。感嘆。
所々に酒井駒子さんが大切に所蔵しているおもちゃや靴が、アクセントの様に展示されている。
酒井駒子ワールドにたっぷり浸れ、至福の時を過ごせる兵庫県立美術館。
実は兵庫県立美術館は今年、開館20周年。奇しくも私が勤務する洲本市立五色図書館(愛称えるる五色)も開館20周年を迎えた。
阪神淡路大震災で、多大な被害を受けた神戸と淡路。人々の心を癒し、励まし、前を向いて進む糧となる様にアートや本の力を借りようと建設された文化施設2館。
共に20周年を迎えた両館が、酒井駒子さんの絵の魅了を余すことなく伝えることで「コロナ禍」を乗り越える力が湧き出てくると思う。
現に、ひとり美術館を訪れた私は、誰とも会わず、誰とも喋らず、ひたすら心の中で酒井駒子作品と対話をし続けていた。
ひとり、「心の中で」感嘆の叫びをあげ続けていた。
癒しと優しさとカタルシス。
酒井駒子展は最高に至福な時間を与えてくれる。美術館はひとりで行くに限る。
あっぱれ、兵庫県立美術館、酒井駒子展。酒井駒子さんと作品に心から感謝。
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